2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K19299
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20580989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 文夫 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (10360653)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ソフトマター / 反応拡散系 / 細胞サイズ空間 / 人工細胞 / 細胞極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学反応と分子拡散の共役(反応拡散共役)によって出現するチューリングパターン(TPs)は、動物の縞模様のように細胞間相互作用で出現する現象を説明可能だが、最新研究において細胞内の分子配置にも重要である証拠が集まってきている。もし細胞の分子配置をTPsが決めていることが証明されれば、分子配置メカニズムにおける生命科学の視点は大きく転換する。そこで本研究では、人工細胞内再構成系と精製された要素を利用し、細胞サイズの空間でTPsが形成可能な条件を解明することを目的としている。 2022年度までに、バクテリアのMin波を改変することでチューリングパターンとみなせる非平衡定常構造の創成に成功した。本成果に関しては2023年度に様々な学会・研究会で成果報告を行った。この成果は、細胞の分子配置をTPsが決めていることの1つの証明となった。また、2023年度は初期胚にみられるTP様の構造であるPAR系の再構成に挑戦した。PARを構成するのに不可欠と考えられている5つの因子を発現精製するために、大腸菌発現、大腸菌抽出液を用いた無細胞転写翻訳系、精製要素からなる無細胞転写翻訳系、小麦胚芽抽出液を用いた無細胞転写翻訳系を試したところ、全長タンパク質の合成可能な条件を発見した。そこで、精製タグの種類や位置、可溶性を検討したところ、1つの要素を除き、発現精製系がほぼ完成した。残された1つに関しては可溶性が著しく低いため、不溶性画分からのリフォールディングや発現条件の最適化を検討する必要が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定したバクテリアのMin波を改変することでチューリングパターンとPAR系の再構成のうち、バクテリアのMin波を改変はほぼ完成した。PAR系に関しては要素の調製にいくつかの困難があったが、おおむね克服した。研究自体は非常に順調であるが、当初想定していた2年間では終わらなかったために、計画を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
Min波を改変してつくられたチューリングパターンについて、論文にまとめ報告する。PAR系に関しては、残された1つの要素を精製し、パターン形成条件を確認する。また、Min波の改変系材料を迅速に得るために、無細胞転写翻訳系を最適化する。
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Causes of Carryover |
本来の計画ではMinシステムの改良によるチューリングパターンの創成と戦中受精卵のPARシステムの再構成を並行して行う予定であった。しかし、思いがけず、Minシステムの改良が良好な結果を得たため、PARシステムは後回しになっていた。PARシステムの要素の発現精製に時間を要したこと、カメラと光源の故障により顕微鏡観察が停滞したことから次年度使用額が生じた。次年度使用額の利用は、PARシステムの再構成と、Minシステム改良型のチューリングパターンの材料調製を迅速化するための無細胞タンパク質合成系の最適化、成果の発表に利用する。
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