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2022 Fiscal Year Research-status Report

組織再生における位置情報メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 22K19306
Research InstitutionTokyo Institute of Technology

Principal Investigator

川上 厚志  東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (00221896)

Project Period (FY) 2022-06-30 – 2025-03-31
Keywords組織再生 / ゼブラフィッシュ / ヒレ / 位置情報 / エピゲノム
Outline of Annual Research Achievements

多細胞体には位置情報が存在すると考えられるが,発生後の組織における存在は明らかでない。私達は,移植実験によって,魚類の鰭条に長さを指令する情報が内在性に存在し,安定な細胞記憶であることを明らかにした。初年度においては以下の研究の進捗があった。
1.鰭条毎の長さの位置情報の性質の検証:鰭条毎の位置情報は,長期に安定であることが示されていたが,再生を繰り返した場合の安定性は明らかでなかった。繰り返し再生を行わせた場合に鰭条の長さ情報が変化するかどうか検討した。その結果,長さ情報は長期かつ繰り返し再生を行った場合でもほぼ変化しないことが明らかとなった。
2.鰭条の長さ情報の組織内分布:長さの位置情報は,鰭条ごとの長さを指定することが以前の研究で示されたが,1つの鰭条の基部―先端部でどのように分布するのか明らかでなかった。そこで,鰭条の基部先端部を反転させたり,トリミングしたりなど,様々の条件での移植実験を行い,鰭条の長さ情報の組織内分布についても詳細な検討を行った。その結果,鰭条の長さ情報は基部―先端部に沿って一様に分布していることが示された。
3.位置情報に従って発現が制御される制御因子の探索:再生組織は切断面に形成される再生芽の増殖によって再形成されることから,長さの情報は再生芽の増殖を介して作用すると考えられ,鰭条毎に発現量が異なる再生芽の増殖を制御する分子シグナルであろうと考えられた。そこで,再生2日目(再生芽形成時)の長い鰭条と短い鰭条のRNAプロファイリングを行い,位置情報に従って発現が制御される制御因子の探索を進めている。予備的研究によって,Inhibin/Tgfb/Bmpの阻害分子であるFolistatin様遺伝子や,Wntリガンドの阻害分子であるDkkを増殖制御因子の候補として同定した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

多細胞体における位置情報のメカニズムについて,初年度においては以下の研究の進捗があった。
1.鰭条毎の長さの位置情報の性質の検証:鰭条毎の位置情報は,長期に安定であることが示されていたが,再生を繰り返した場合の安定性は明らかでなかった。繰り返し再生を行わせた場合に鰭条の長さ情報が変化するかどうか検討した。その結果,長さ情報は長期かつ繰り返し再生を行った場合でもほぼ変化しないことが明らかとなった。
2.鰭条の長さ情報の組織内分布:長さの位置情報は,鰭条ごとの長さを指定することが以前の研究で示されたが,1つの鰭条の基部―先端部でどのように分布するのか明らかでない。そこで,鰭条の基部先端部を反転させたり,トリミングしたりなど,様々の条件での移植実験を行い,鰭条の長さ情報の組織内分布についても詳細な検討を行った。その結果,鰭条の長さ情報は基部―先端部に沿って一様に分布していることが示された。
3.位置情報に従って発現が制御される制御因子の探索:再生組織は切断面に形成される再生芽の増殖によって再形成されることから,長さの情報は再生芽の増殖を介して作用すると考えられ,鰭条毎に発現量が異なる再生芽の増殖を制御する分子シグナルであろうと考えられた。そこで,再生2日目(再生芽形成時)の長い鰭条と短い鰭条のRNAプロファイリングを行い,位置情報に従って発現が制御される制御因子の探索を進めている。予備的研究によって,Inhibin/Tgfb/Bmpの阻害分子であるFolistatin様遺伝子や,Wntリガンドの阻害分子であるDkkを増殖制御因子の候補として同定した。

Strategy for Future Research Activity

初年度の研究では,鰭条毎の長さ情報は長期かつ繰り返し再生を行った場合でもほとんど変化しないことが明らかとなった。また,鰭条の基部先端部を反転させたり,トリミングしたりなど,様々の条件での移植実験を行い,鰭条の長さ情報の組織内分布についても詳細な検討を行い,鰭条の長さ情報は基部―先端部に沿って一様に分布していることが示された。さらに,ヒレの端と真ん中で発現差がある遺伝子の探索を進め,Folistatin様遺伝子や,Dkk等を増殖制御因子の候補として同定した。これらに基づき,今後の研究では,組織再生における位置情報のメカニズムについて以下のように推進する計画である。

(1)部域的な再生芽増殖の差:再生において新たに形成される組織は,再生芽間葉細胞の増殖によって作られる。従って,切断面の細胞が持っていた鰭条毎の長さの情報は,再生芽を介して,細胞増殖の差や長さの違いを産み出すと考えられる。この過程の詳細を吟味するため,鰭条毎にリクルートされる再生芽の数や増殖速度を詳細に測定し,位置情報の翻訳メカニズムを吟味する。
(2)位置情報に従って発現が制御される制御因子の解析:再生芽の増殖を制御する分子は,再生芽に発現し,鰭条毎に発現量が異なると考えられる。予備的研究によって,ヒレの端と真ん中で発現差がある遺伝子Folistatin様遺伝子,Dkkを同定した。これらの増殖阻害因子が再生芽の増殖調節に関わっているかを, トランスジェニックによるGain-of-Function解析によって検証する。
(3)部域による制御因子発現差のメカニズム:鰭条の長さ情報の極めて安定な性質は,エピジェネティックな制御が,長さ情報の実体である可能性を示唆している。このことを検証するため,再生芽に誘導される細胞増殖因子の遺伝子周辺のメチル化が,鰭条によって異なるかどうか解析する。

Causes of Carryover

ヒレ鰭条の部域による長短は,再生芽の増殖の違いによって生じると予想していたが,再生芽細胞数を調べると,初期の形成時にすでに差があることが判明した。再生芽の初期細胞数,増殖速度,増殖期間がどの程度長さの差に寄与しているか新たに検討する必要が生じた。そのために,予定していたエピジェネティックな情報による制御機構の解析に取り掛かるのが遅れている。次年度は,このプロジェクトに取り掛かるため,解析に使用するキットや試薬などの購入に使用する計画である。

  • Research Products

    (15 results)

All 2023 2022

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results) Presentation (13 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)

  • [Journal Article] Splashed E-box and AP-1 motifs cooperatively drive regeneration response and shape regeneration abilities.2023

    • Author(s)
      Tamaki, T., Yoshida, T., Shibata, E., Nishihara, H., Ochi, H., and Kawakami,A.
    • Journal Title

      Biology Open

      Volume: 12 Pages: -

    • DOI

      10.1242/bio.059810

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] A PI3Kg signal regulates macrophage recruitment to injured tissue for regenerative cell survival.2022

    • Author(s)
      Zhou, S., Liu, Z., & Kawakami, A.
    • Journal Title

      Development, Growth & Differentiation

      Volume: 64 Pages: 433-445

    • DOI

      10.1111/dgd.12809

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Origin and lineage of the basal stem cells of the epidermis in zebrafish2022

    • Author(s)
      Zhengcheng Liu, Yidan Meng, Atsushi Kawakami
    • Organizer
      第28回 小型魚類研究会
  • [Presentation] Origin and lineage of mesenchymal cells in zebrafis2022

    • Author(s)
      Hiroaki Komiya and Atsushi Kawakami
    • Organizer
      第56回日本発生生物学会
  • [Presentation] Origin and lineage of the basal stem cells of the epidermis in zebrafish fin2022

    • Author(s)
      Zhengcheng Liu, Yidan Meng, and Atsushi Kawakami
    • Organizer
      第56回日本発生生物学会
  • [Presentation] Excess retinoic acid signaling induces retinoic acid clearance to suppress regeneration of zebrafish fin2022

    • Author(s)
      Kumpei Murase, Eri Tanishita, Tomoya Nakashima, Ayumi Nagashima, Atsushi Kawakami
    • Organizer
      第56回日本発生生物学会
  • [Presentation] Regeneration response enhancers composed of E-box and AP-1 motifs2022

    • Author(s)
      Takafumi Yoshida, Teruhisa Tamaki, Eri Shibata, Hidenori Nishihara, Haruki Ochi, Atsushi Kawakami
    • Organizer
      第56回日本発生生物学会
  • [Presentation] ゼブラフィッシュ尾鰭間葉細胞の起源と成長,再生における細胞系譜2022

    • Author(s)
      小宮広滉,川上厚志
    • Organizer
      第74回日本動物関東支部年会
  • [Presentation] ゼブラフィッシュの組織再生における再生応答エンハンサー2022

    • Author(s)
      吉田貴史、田牧輝久、柴田恵里、西原秀典、越智陽城、川上厚志
    • Organizer
      第74回日本動物関東支部年会
  • [Presentation] RARアゴニストはRA分解を誘導して再生を阻害する2022

    • Author(s)
      村瀬訓平,谷下絵里,中島朋哉,永嶌鮎美,川上厚志
    • Organizer
      第74回日本動物関東支部年会
  • [Presentation] Study of epidermal homeostasis and regeneration by long-term lineage tracing of basal stem cells in zebrafish2022

    • Author(s)
      Zhengcheng Liu, Yidan Meng, and Atsushi Kawakami
    • Organizer
      第74回日本動物関東支部年会
  • [Presentation] The origin and lineage of cells that give rise to the zebrafish fin2022

    • Author(s)
      Hiroaki Komiya and Atsushi Kawakami
    • Organizer
      17th International Zebrafish
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] The combination of E-box and AP-1 motifs functions as the regeneration-response enhancer2022

    • Author(s)
      Takafumi Yoshida, Teruhisa Tamaki, Eri Shibata, Hidenori Nishihara, Haruki Ochi, Atsushi Kawakami
    • Organizer
      17th International Zebrafish
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] RARアゴニストはRAシグナルのアンタゴニストとして作用して,ゼブラフィッシュの尾ひれ再生を阻害する2022

    • Author(s)
      村瀬訓平,谷下絵里,中島朋哉,永嶌鮎美,川上厚志
    • Organizer
      第93回日本動物学会大会
  • [Presentation] Origin and lineage of basal stem cells of the skin in zebrafish fin and their behavior during normal development and regeneration2022

    • Author(s)
      Yidan Meng, Zhengcheng Liu, and Atsushi Kawakami
    • Organizer
      第93回日本動物学会大会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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