2023 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms of the reproductive system for avoiding inbreeding evolved in the invasive ant
Project/Area Number |
22K19338
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
宮川 一志 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (30631436)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 美里 (岡本) 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 学振特別研究員 (00648082)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 雄性発生 / ウメマツアリ / 近親交配回避 / 染色体挙動 / 繁殖戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
アリ類は近親交配に弱いにも関わらず、侵入に伴う遺伝的ボトルネックを克服し世界中に分布している。ウメマツアリは新女王(雌)は母系のみ、雄は父系のゲノムのみ受け継ぎ生産される(雄性発生)ため、雌雄間に実質的な遺伝子交流がなく兄妹間の交尾でも近親交配に不妊雄は生じない。本研究は、ウメマツアリで見られるこの近親交配を回避する特殊な繁殖様式の進化遺伝学的基盤を、卵巣内の卵母細胞や胚のRNA-seq、胚発生のライブ観察および機能解析などによって解明することを目的として開始した。 2022年度は研究に用いるRNA-seqをはじめとした分子生物学実験に必要となる、1個体からのRNA抽出方法を確立した。また、ワーカー卵(メス)を用いたDAPI染色で産卵直後の前核の様子を観察する方法を確立した。 2023年度は初夏の繁殖シーズンにオス卵を採集しワーカーとの比較を行う予定であったが、シーズン到来が2022年より若干早く、解析に十分なオスサンプルを集め切ることが困難であったため、次年度以降の解析に向けてより正確な胚発生過程の染色体挙動の観察手法の確立に加えて、新たに母系のみを受け継ぐ新女王の発生過程解明に向けた実験を開始した。前者の胚発生過程の染色体挙動の観察についてはDAPI染色に加えて抗チューブリン抗体を用いた免疫染色を行うことで、ワーカー卵における分裂装置の様子を観察に成功した。また核酸染色試薬のマイクロインジェクションによる核のライブ観察にも成功した。現在チューブリン染色試薬も同時に注入することで分裂装置のライブイメージングに挑戦している。後者の母系の解析については、女王分化が生じる幼虫期の経時的な形態計測により、遺伝子発現解析などに必要となる幼虫期の詳細なステージングを行った。 本研究によって、父系母系双方の繁殖個体の出現過程をワーカー卵と比較解析する実験基盤が整った。
|