2023 Fiscal Year Research-status Report
History of humans and pathogens revealed by ancient viral genome analysis
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22K19343
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
安達 登 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智久 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30585310)
神澤 秀明 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (80734912)
森石 恆司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90260273)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | HBVゲノム / 古代DNA / 感染実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
青森県尻労安部遺跡および北海道北黄金貝塚から出土した人骨から検出されたヒトB型肝炎ウイルス(HBV)の遺伝子(以下、SHTおよびKGN)は、全領域を通じて塩基配列の相同性が高く、共通の祖先を持つHBV遺伝子と考えられた。既知のHBVのジェノタイプの中で、SHTとKGNはともに全体として東南アジア型のHBV遺伝子(SEA)に最も近ことが分かった。SHTもKGNも少なくともCore領域はSEA由来であり、SHTはSEA由来のS領域の一部を持っている。SHTはこのS領域において、ジェノタイプJやジェノタイプC4に非常に近い。そして、SHTとKGNの縄文タイプ(縄文タイプ:preS1に33bpのインサートを持ちその他の配列は全体としてSEAと近い)を系統ネットワーク解析した結果、これらのHBVは早い時期(:後期更新世の間)にSEAから分岐した可能性が示唆された。この結果から、SHTとKGNの共通祖先は東南アジアに起源を持ち、SEAから分岐して日本列島に到達し、そこで分岐・拡散したと考えられた。SEAには存在しないpreS1領域での33bpのインサートがSHT、KGNにはあることからも、SHTとKGNの縄文型はしばらくの間単系統であり、その後SHTとKGNに分岐した可能性があることが分かった。今回の研究で、東アジアに到達した初期の人類のうち、縄文人の祖先集団の一部とヒマラヤの南下集団との間に強い関係があることが明らかとなった。この成果を、第77回日本人類学会大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の様に遺伝子分析は終了し、投稿論文もほぼ完成して、近日中に査読つき英文誌に投稿する予定である。ただし感染実験をおこなえていないため、次年度中に感染実験を実現させる。
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Strategy for Future Research Activity |
感染実験を実施する。古代HBVのDNAを培養細胞に導入、レプリコンを作製、導入後の複製効率をaHBVと現代HBVと比較する。さらにウイルス粒子を再現し、aHBVとmHBVの現代人のNTCPへの感染効率の比較、aHBVとmHBVの古代人のNTCPへの感染効率を感染実験で探る。また、HBVの病原性にはHBVの産生するHBxタンパクが関わるが、その機序は未だ不明な部分が多い。予備研究でHBxの塩基配列に進化速度の遅い部分を特定しており、本研究で得られた古代HBV DNAからHBxの保存領域を取り出したプラスミドを培養細胞に導入し、レプリコンまたはウイルス粒子を復元し、ウイルス増殖におけるHBxの機能を明らかにする。
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Causes of Carryover |
感染実験がおこなえなかったことから、経費を使い切ることが出来ず、次年度使用額が発生してしまった。次年度は感染実験を本格的におこなう予定である。
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