2023 Fiscal Year Research-status Report
生体脳での軸索起始部の観察と操作を可能にする技術基盤の確立
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22K19358
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久場 博司 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362469)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 軸索起始部 / ゲノム編集 / 可視化 / 操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
軸索起始部(AIS)可塑性は、脳の機能や病態を決定する上で中核的な役割を担うと考えられる。しかしながら、その回路・個体レベルでの意義に対する理解は進んでいない。この主な理由として、現在のAIS研究では同一細胞でのAIS分布の継時変化を評価することが困難なことが挙げられる。本研究では、生体脳においてAIS分布を連続的に観察する技術と人為的に操作するための技術基盤を確立する。 本年度は、生体内ゲノム編集を用いた内在性タンパク質標識(SLENDR法)によるAIS可視化のさらなる効率向上を目指した。Plasmidベクターを電気穿孔法で導入する方法からCas9タンパク質とgRNAを試験管内で複合体形成させたものを電気穿孔法で導入する方法(eCHIKIN法)に変更することにより導入効率を改善することができたが、蛍光タンパク質を直接ノックインする方法では電位依存性Naチャネル(Nav1.6)やその足場タンパク質(ankyrinG)の信号をライブで観察することは困難であった。このため、halo-tagによる標識を試みた。Halo-tagによる標識には長いsingle strand DNAの合成が必要であるため、PCRの条件検討を行い最適な条件を確立した。その後、βアクチンをhalo-tag標識するコンストラクトを作成し、eCHIKIN法による脳幹聴覚神経細胞への導入を行った。この動物から作成した脳切片培養標本において、halo-tagリガンドを投与することによりβアクチンの信号を確認することができた。また本年度は、cdk5の活性調節によるAIS長の操作技術についても検討を行った。cdk5不活性変異体、もしくはcdk5活性化因子であるp35の過剰発現により、AIS長はそれぞれ延長、もしくは短縮し、cdk5/p35がAIS可塑性制御のツールとして有用であることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Halo-tagを用いた内在βアクチンの標識とcdk5の活性調節によるAIS長の操作にも成功したものの、生体内でのAISの観察や操作には至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
Halo-tagにより内在ankyrinGを標識した脳切片培養標本を用いて、AIS可塑性を誘導した際のAISの構造変化をライブで経時的に観察する。さらに、二光子顕微鏡(FV1000MPE)、もしくはエンドスコープ(Doric)を用いた生体内での観察も行う。大脳皮質の錐体細胞では、発達期にAIS長が感覚経験に応じて短縮することが知られているため、可能であれば、この変化を経時的に観察することを試みる。また、生体内でのp35の時期特異的な発現制御(過剰発現、ノックアウト)によるAIS長の操作を試みる。
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Causes of Carryover |
大学運営業務の増加とカリキュラム改変による教育業務の増加、さらに研究協力者であるスタッフが異動したことによる実験進捗の遅滞によって次年度使用額が生じた。この費用は、切片培養標本や生体標本での観察と操作の際に利用する動物と試薬のための経費として使用する。
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