2022 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の細胞膜張力を標的とした化合物の探索と治療法への応用
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22K19379
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
辻田 和也 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (10457054)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞膜張力 / がん / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは、細胞膜とアクチン皮層との接着により制御される細胞膜張力が、腫瘍形成や浸潤・転移を抑える「機械的がん抑制因子」として働くという新しいコンセプトを提示した。本研究では、このコンセプトをがん治療に応用すべく、われわれが独自に開発した細胞膜張力の変動を可視化するシステムを用いて、細胞膜張力を上げる作用を持つ化合物をハイスループットスクリーニングにより同定する。そして、同定した化合物が腫瘍形成・転移能を抑制するかを検証し、がん細胞膜の物理特性を標的とした画期的ながん治療薬の候補化合物の提示に挑戦することを目指している。本年度は、モデル細胞として広く使用されている転移性乳がん細胞株であるMDA-MB-231細胞を用い、細胞膜張力とアクチン細胞骨格の変化を可視化するため、GFP-FBP17(細胞膜張力センサータンパク質)とLifeAct-mCherry(アクチン細胞骨格)を安定的に発現する細胞株を樹立した。実際に、細胞膜張力を増加させる作用を持つことが知られている化合物の添加により、GFP-FBP17が細胞膜から外れ細胞質に移行し、細胞膜の伸展構造が抑制され、細胞形態が運動性状態から非運動性細胞様に変化することを確認した。現在、これらの変化を指標にして、蛍光画像を自動取得したハイスループット解析により、化合物ライブラリーを用いて、細胞膜張力を増加させる候補化合物の一次スクリーニングを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、構築したスクリーニングのシステムがうまくワークし、現在、解析が進んでいるため、本年度はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、同定した候補化合物について、実際に細胞膜張力を増加させる作用を持つかを、光ピンセットを用いて確認する。最終的に、同定した化合物の投与により、腫瘍形成や浸潤・転移が抑制されるかを検証する。
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Causes of Carryover |
スクリーニングの構築が順調に進み、当初予定していた支出が減少したため。
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