2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K19392
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
北川 裕之 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (40221915)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / プロテオグリカン / 加齢性変化 / サルコペニア / 未病 / サテライト細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
「未病状態(疾病前状態)」や「前老化状態(加齢性変化)」は健康・医療戦略を考える上で重要な概念になっている。健康と病気、成熟と老化の間は連続しているため、「未病状態」や「前老化状態」のコントロールの仕方で、病気の発症しやすさや老化スピードに個人差が生じる。したがって、未病状態の背後にある動作原理の解明は重要である。運動機能の主体をなす骨格筋は、比較的再生能力が高く、ダメージを受けても筋組織内に点在する筋サテライト細胞を動員し、筋線維を再生する。しかしながら、その再生能も加齢に伴い次第に低下し、サルコペニアの発症に繋がる。筋再生能の低下は、筋組織内の微小環境変化に起因すると考えられているが、その実体はよくわかっていない。サテライト細胞周囲の微小環境がサテライト細胞の機能発現制御に関与することが報告されており,普遍的な細胞外マトリックス分子であるコンドロイチン硫酸(CS)鎖が骨格筋の再生・維持機能を支える微小環境因子である可能性が示唆された。実際これまでに我々は,CS鎖の一過的な減少を介した微小環境のリモデリングが骨格筋分化・再生の推進剤になりうることを見出している。そこで,骨格筋におけるCS鎖の加齢性構造変化と骨格筋再生・維持機能の低下との関連を検証した。 解析の結果,骨格筋に発現するCS鎖は,加齢に伴いその量が漸減する傾向を示すのみならず,硫酸化構造が劇的に変動した。さらに,この老齢型CS鎖に特徴的な硫酸化構造は,サテライト細胞プールの維持やその活性化を介した筋再生に対して抑制的であることがわかった。これらの結果から,骨格筋におけるCS鎖の加齢性構造変化は,サテライト細胞を軸とした骨格筋の再生・維持機能の低下を招く要因の一つであり,CS鎖の質的・量的な発現制御がサルコペニアの治療・予防法の開発に有用であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋組織内に点在する筋サテライト細胞周囲の微小環境を構築するコンドロイチン硫酸鎖が、骨格筋の再生・維持機能を支える微小環境因子である可能性が示唆されつつあり、研究が概ね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、我々がこれまでに確立した何種類かのコンドロイチン硫酸合成酵素遺伝子ノックアウトマウスには、若年での筋力低下や統合失調症様症状などが現れるので、これらのマウスを利用して、グライコミクス解析やシングル細胞トランスクリプトーム解析を展開することで、病気の発症までの過程に関わる糖鎖の合成異常と生体ネットワークの変化を細胞レベルで解析する。
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Causes of Carryover |
昨年度は、遺伝子改変マウスの交配や既存の細胞を用いた実験が中心だったので、次年度使用額が生じた。
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