2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K19412
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
荒川 博文 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (70313088)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 相分離 / 液滴 / 非膜オルガネラ / 代謝連続反応 / カルジオリピン / 酵素反応 / バイオサーファクタント / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞における人為的代謝制御法の開発は人類の夢である。我々はMieapタンパク質がミトコンドリアに膜のないオルガネラ(Mieap液滴)を形成し、ミトコンドリアに特異的なリン脂質であるカルジオリピン(CL)の代謝反応(生合成とリモデリング)を区画化・促進している可能性を見出した。Mieap液滴はCL代謝を促進してミトコンドリアのエネルギー産生を上昇させ酸化ストレスを抑制することで健常なミトコンドリア機能を維持し老化や疾患の予防に重要である。本研究は、Mieap液滴による代謝連続反応制御のメカニズムの解明を目的に行われた。結果として、(1)Mieapタンパク質は中央からN末端側が親水性、C末端側が疎水性の両親媒性タンパク質であること、(2)N末端領域には3カ所の天然変性領域と2カ所のcoiled-coil領域を認め、7つのCL代謝酵素との緩い結合に重要であること、(3)C末端疎水領域でCL及びCL関連脂質と強固に結合すること、(4)Mieap液滴はMieap及びCL関連脂質を含有する基質相とCL代謝関連酵素を含有する酵素相の2種類の相から構成される多層構造を呈すること、(5)CL代謝連続反応は基質相と酵素相の界面で起こっていること、(6)Mieapタンパク質がバイオサーファクタントとして、界面においてCL代謝酵素とCL関連脂質を近接させる役割を果たしていること、(7)Mieapタンパク質は天然変性タンパク質として、Mieap液滴を単独で誘導できる足場タンパク質であること、(8)N末端領域でのCL代謝酵素との結合には14-3-3γタンパク質が介在していること、などの可能性を明らかにした。以上の結果から、生体内の標的細胞内でMieapタンパク質の発現を上昇させることが出来れば、人為的にCL代謝を促進させることで、生体内でのミトコンドリアの機能を増進させることが可能になると考えられる。
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