2022 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫関連遺伝子を用いた新しい全細胞型がんワクチンの開発
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22K19449
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清野 研一郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (20312845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 はるか 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (70392181)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | がんワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでのマウスを用いた研究で、乳がん細胞(4T1)に放射線照射し事前に生体に接種しておくと、その後同じがん細胞を接種しても腫瘍形成しないというワクチン効果を持つ細胞株(4T1-S)と効果を持たない細胞株(4T1-A)を同定した。このワクチン効果はT細胞欠損マウスでは見られないことから、T細胞依存的な反応と考えられた(Abe et al. Hum Cell 29:58-66, 2016)。その後、既報により同様の効果を持つことが知られている他の細胞株(CT26、MCA205)、持たないとされている細胞株(B16)を準備し、それぞれの放射線照射後の遺伝子発現を比較検討した。「FPKMの差が5倍以上、なおかつそれ自身のFPKMが20以上(高発現)」という(厳しい)条件で探索すると、非常に興味深いことに、ワクチン効果を持つ細胞群では自然免疫に関する遺伝子(Innate immunity-related gene: Irg)が共通して上昇していることが判明した。そこで、予備検討として同遺伝子セットのうち上位3つの遺伝子(Irg1, Irg2, Irg3)を中等度のワクチン効果を示すCT26に導入しマウスにワクチンとして接種したところ、100%のマウスで完全に野生型がん細胞の生着を抑制した(下図)。さらに、ワクチン効果を持たない4T1-Aに遺伝子導入しマウスに接種したところ、完全ではないがワクチン効果を発揮するようになった(次頁図)。すなわち、我々が発見した遺伝子セットは、ワクチン効果を持たないがん細胞にその効果を付与する能力があることが予想された。 本年度はそのメカニズム解析を行なった。放射線照射した4T1-Sを接種した近傍のリンパ節を調べるとIFN-gの発現が高くなっていることが判明した。細胞レベルで調べると、T細胞ならびにB細胞でIFN-gの発現が高かった。そこでB細胞を除去すべく抗CD20抗体を投与すると、上記のワクチン効果は消失した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
4T1-Sによるワクチン効果のメカニズム解析が進み、論文投稿にまで至ったことから。
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Strategy for Future Research Activity |
他の細胞でも同様にワクチン効果を誘導可能で亞あるか、一旦生着したがんに対しても有効であるかどうか(治療ワクチン)、ヒトのがんでも同様の効果が得られるかどうか、などについて検討を行う。
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Causes of Carryover |
予定より安価で調達できた物品があったため、残額が生じた。 残額については、(価格が高騰している)抗体の購入に充てる。
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