2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K19457
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
垣内 伸之 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (90839721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 顕礼 京都大学, 医学研究科, 助教 (20515514)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 食道癌 / クローン進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
食道がんは男性において7番目に多く、男女併せて年間約1万人強が死亡している。これまでの研究により、正常食道上皮は加齢や食道がんリスク因子への暴露によりがんドライバー変異クローンによって再構築されることが判明したが、正常上皮から異型上皮への形質転換メカニズムについては未だ詳細は不明である。本研究では微小検体採取技術とゲノム・トランスクリプトーム同時解析技術を用いて、発がん最初期におけるヒト食道上皮細胞の形質転換メカニズムを解明し、食道がんの発がん予防や発症前治療の開発に資する知見を得ることを目的としている。 研究初年度である2022年度は様々な背景の患者の、ルゴール染色性粘膜、ルゴール不染帯、および腫瘍から検体を採取した。組織溶解により核酸を溶液中に放出させ、その後、核酸を精製することなく次世代シーケンサー用のライブラリを作成する技術を確立した。試験的に実施した細胞株100細胞からのシーケンスでは、ゲノムおよびトランスクリプトーム解析が可能であった。ルゴール不染帯は組織学的に正常から低異型性、高異型性、がんまで様々な病理像を呈するが、HE染色像に加えてTP53免染およびKi67免染を行う事で採取した粘膜の組織学的悪性度を評価したところ、ルゴール不染帯のサイズと悪性度の間に相関が見られた。このことに基づいて次年度はさらに多数の検体を採取し、高異型度病変に至るクローン進化を駆動する分子メカニズムの解明に挑む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である2022年度は患者検体の解析手法を確立し、次世代シーケンサーによるゲノム・トランスクリプトーム同時解析技術の確立に焦点を当てた。食道がん患者40例から計160検体ほどを集積し、同時に近傍の組織からホルマリン固定パラフィン包埋ブロックを作成して将来の病理学的悪性度評価に備えている。同時に、ルゴール染色性粘膜およびルゴール不染帯から網羅的ゲノム解析を行い、悪性化に伴うゲノム変化について解析を実施した。本研究は計画に基づいて概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム異常の観点から差異がない細胞において、正常食道組織と異型組織といった形質転換を制御する機構を解明するため、以下の通り研究を計画している。 昨年度に引き続き、上部消化管内視鏡検査をうける患者より同意を得た上で食道粘膜を通常の生検法で採取する。採取した食道粘膜は核酸に影響がないアルコールベースの固定液により固定し、パラフィン包埋を行う。10um厚の切片を作成し、核酸に影響が少ない変法HE染色を行い、病理学的評価を行った上で異型上皮とその周辺の非異型上皮を採取する。 細胞溶解液に含まれているDNA・RNAを用いて網羅的ゲノム・トランスクリプトーム解析を行うことにより、形質転換を制御するメカニズムを解析する。これによって抽出された形質転換を駆動する遺伝子に着目し、ヒト食道がんオルガノイド・細胞株を用いて、CRISPR/Cas9ノックアウトによりがん細胞の増殖、Xenograft形成能に与える影響を解析する。
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Causes of Carryover |
研究参加者が予定よりも少なかったため、解析に必要な費用が予定よりも少なかった。次年度は参加者1名あたりの検体解析数を増やし、計画通りの解析を実施する予定である。
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