2022 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージによるがん細胞の貪食を強力に誘導する革新的抗腫瘍薬の開発
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22K19458
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
的崎 尚 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (80252782)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 抗体依存性細胞貪食 / マクロファージ / SIRPα / CD47 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は本研究の開始前までにCD47欠損マウス赤血球上の分子を抗原としたモノクロナール抗体を複数種得てきており、抗体には「野生型及びCD47欠損赤血球に対する貪食を正に制御する抗体(Aタイプ)」と「主にCD47欠損赤血球に対する貪食を正に制御する抗体(Bタイプ)」の大きく2パターンがあることを明らかにしてきた。Aタイプの代表的な抗体が認識する分子は赤血球膜に高度に発現する分子Xであったが、さらに、この抗X抗体の脾臓マクロファージ(MΦ)による野生型赤血球の貪食促進は、抗SIRPα抗体の存在下で有意に増強することも明らかにしていた。そこでこの抗体を抗SIRPα抗体と併用することで抗腫瘍剤としても利用できる可能性につき検討する目的で、マウス由来がん細胞株と骨髄由来MΦを共培養している培地中に抗SIRPα抗体と抗X抗体を添加してその作用を調べた。その結果、両抗体を共に添加した場合にはMΦによるがん細胞貪食が強く亢進することを見出した。また、in vivoおいても抗SIRPα抗体と抗X抗体の併用が強い抗腫瘍効果を示す可能性をがん細胞皮下移植マウスモデルの系で明らかにしつつある。一方、Bタイプの代表的な抗体が認識する分子についても本研究の開始前までに同定したところ、赤血球膜に発現する分子Yであったが、同時に脾臓MΦにも発現が確認され、すでにMΦによる貪食作用に関わることが知られている膜分子であった。この分子Yは、CD47-SIRPα系とは独立した機序により細胞貪食を抑制するシグナル系である可能性が示唆されるので、現在分子Y遺伝子欠損マウスを用いた解析を進めている。また一方で、CD47-SIRPα系を阻害した条件下でがん細胞に対するMΦ貪食をさらに強力に促進できる抗体を得るためにCD47欠損がん細胞の作出を進めた(この細胞上の分子を抗原として用いる目的のため)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗SIRPα抗体と併用することで強い抗腫瘍効果を示す可能性のある抗体が得られており、一方でさらに強力な抗体を作出するための準備も進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitro及びin vivoおいて、抗SIRPα抗体と抗X抗体の併用が強い抗腫瘍効果を示すことを様々ながん細胞種について検討する。また、CD47-SIRPα系とは独立した機序により細胞貪食を抑制するシグナル系である可能性のある分子Yについては遺伝子欠損マウスを用いた解析を進める。一方、CD47-SIRPα系を阻害した条件下でがん細胞に対するMΦ貪食をさらに強力に促進できる抗体の作出を進める。
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Research Products
(16 results)