2022 Fiscal Year Research-status Report
クロマチンの運動性から捉える転写制御のゆらぎとがん細胞の悪性化
Project/Area Number |
22K19465
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
野澤 竜介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (70868710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新海 創也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60547058)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 転写 / クロマチン / 超解像イメージング解析 / がんのイニシエイション / 転写制御のゆらぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞では、ゲノム全体の転写レベルが変動していることが明らかとなっている。転写はプロモーターとエンハンサーとの動的な相互作用によって制御されることが明らかとなってきたが、クロマチンの動態を細胞内でとらえる技術が未だ限られているため、がん細胞において転写制御に関わるクロマチンの振る舞いがいかに変化しているのかについては未だよくわかっていない。そこで本研究では、転写制御クロマチンの動態を、超解像顕微鏡STORMを用いて1分子レベルで観測する技術を開発することを目的とした。令和4年度は、以下の2項目を進め、細胞核内の転写制御クロマチンの集合動態を定量的に解析する手法を確立した。 1) プロモーターやエンハンサーといった転写制御クロマチンを構成するヒストンH2A.Zに着目した。細胞核内に局在するH2A.Z分子のXY座標情報をSTORMにより抽出し、Pair-correlation関数を導入することで、H2A.Zのクラスターのサイズやクラスター形成の頻度を評価することができた。また転写阻害処理や脱アセチル化酵素の阻害剤であるTSA処理によって、H2A.Zのクラスター形成の頻度が有意に減少することが見出された。 2) ATAC-seqの原理を応用した、オープンクロマチン領域を可視化するATAC-seeとSTORM解析とを組み合わせた「ATAC-STORM法」を検討した。Tn5トランスポゼースと蛍光ラベルしたオリゴDNAを用いて、オープンクロマチンを標識し、1)と同様に、STORMを用いて標的の座標情報を抽出し、Pair-correlation関数によるクラスター解析を試みた。オープンクロマチンのクラスター形成もまた、H2A.Zの挙動と一致して、転写阻害処理やTSA処理により有意に減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超解像顕微鏡STORMを用いた標的分子の集合や分散を評価するクラスター解析を立ち上げることができ、計画した実験をほぼ予定通りに実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究より、転写の制御をH2A.Zやオープンクロマチンのクラスター形成という視点で評価することが可能となった。今後は、がんのイニシエーションにおける転写制御の変化の理解を目指して、がん遺伝子を細胞に発現させた時の、転写制御クロマチンの集合動態に着目して解析を進めていきたい。
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Research Products
(9 results)