2022 Fiscal Year Research-status Report
パラログ欠損がんを一網打尽にする合理的な合成致死治療法の開発
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22K19470
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
荻原 秀明 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40568953)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 合成致死性 / パラログ / CBP/p300 / BRG1/BRM / ARID1A/ARID1B |
Outline of Annual Research Achievements |
合成致死性とは細胞内の2つの因子が両方とも機能欠損したときに致死となる現象である。パラログとは相同性の高い因子であり、片方のパラログ因子(A1)の欠損型細胞では、残りのもう片方のパラログ因子(A2)を抑制すると合成致死性となる。一方で、欠損型異常を来した遺伝子(A1)にパラログ遺伝子(A2)が存在していると、残りのパラログ遺伝子(A2)の発現が増加する現象が知られている。したがって、この現象に関与する転写促進因子を抑制することで合成致死性を誘導させることが期待できる。そこで、本研究では、このような転写促進因子を同定することで、パラログを有する遺伝子の欠損がんに有望な治療法の確立を目指す。そこで2022年度は以下の研究を行った。 BRG1、CBP、ARID1Aは様々ながんで高頻度に欠損型遺伝子異常が認められ、これらの遺伝子のパラログとしてBRM、p300、ARID1Bがそれぞれ存在する。また、BRG1、CBP、ARID1Aの欠損型細胞では、BRM、p300、ARID1Bの抑制により合成致死性を示す。そこで、遺伝子間の機能的関係の解析を明確にするために正常型細胞であるHEK293Tのアイソジェニック細胞株モデルとして、BRG1-KO、CBP-KO、ARID1A-KO細胞株を樹立した。つぎに、各KO細胞株において、相補的なパラログ遺伝子の発現量を調べた結果、CBP-KO、ARID1A-KO細胞において、それぞれのパラログ遺伝子であるp300、ARID1Bの発現が増加する現象を見出した。したがって、これらの発現を促進する因子が存在することが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、パラログ遺伝子間で合成致死となるBRG1/BRM、CBP/p300、ARID1A/ARID1Bについての転写相補機構を解明するために必要なノックアウト細胞株モデルを構築し、パラログ遺伝子間での転写相補機構が機能していることを見出したため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、相補的なパラログの転写の促進に関与する因子を探索するために、CBPとARID1Aのアイソジェニック細胞株モデルを用いて、転写促進因子群の中からCBP-KO、ARID1A-KO細胞株モデルで共通して合成致死性を示す標的因子を同定する。さらに、それらの標的を抑制した時に相補的パラログの発現が減少する因子を絞り込む。また、その標的因子が転写促進因子として相補的パラログ遺伝子の転写を制御しているかを検討するために、標的因子が相補的パラログ遺伝子の転写制御領域に結合するのか、また、標的因子の抑制により転写促進マーカーなどの減弱が見られるかを検討することで、パラログ遺伝子間の相補的な転写の制御を決定づけている標的因子を同定する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:データの解析および細胞株樹立に十分な時間をかけ、研究計画よりも最小限の実験に抑えたため。 次年度の使用計画:主に細胞培養やアッセイ系の構築に関する物品の購入や機能解析に必要なNGS受託解析などに使用する。
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