2023 Fiscal Year Annual Research Report
パラログ欠損がんを一網打尽にする合理的な合成致死治療法の開発
Project/Area Number |
22K19470
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
荻原 秀明 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40568953)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | パラログ / 合成致死性 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成致死性とは細胞内の2つの因子が両方とも機能欠損したときに致死となる現象である。パラログとは相同性の高い因子であり、片方のパラログ因子(A1)の欠損型細胞では、残りのもう片方のパラログ因子(A2)を抑制すると合成致死性となる。一方で、欠損型異常を来した遺伝子(A1)にパラログ遺伝子(A2)が存在していると、残りのパラログ遺伝子(A2)の発現が転写レベルで増加する遺伝学的相補機構が知られている。そこで、代表的なパラログBRG1/BRM、CBP/p300の遺伝学的相補機構について、ノックアウト細胞株モデルで検証した。その結果、BRG1-KO細胞株では、BRMのタンパク質の発現が増加したが、BRMのmRNAの発現の増加は認められなかった。逆に、BRM-KO細胞株では、BRG1のタンパク質の発現が増加したが、BRG1のmRNAの発現の増加は認められなかった。同様に、CBP-KO細胞株では、p300のタンパク質の発現が増加したが、p300のmRNAの発現の増加は認められなかった。逆に、p300-KO細胞株では、CBPのタンパク質の発現が増加したが、CBPのmRNAの発現の増加は認められなかった。つまり、片方のパラログが欠損すると、相方のパラログのmRNA量は変わらないが、“タンパク質量”が増加するということである。このように片方のパラログが欠損しても、相方のパラログが相補する現象は、遺伝学的相補機構による転写制御ではなく、タンパク質の量的制御が関与していると考えられた。 遺伝学的相補機構は、マウスなどの下等生物で認められた現象であったが、本研究でヒト細胞株モデルで検証した結果、パラログ遺伝子間の遺伝学的相補機構を確認することができなかった。しかし、当初想定していた転写レベルでの相補機構ではなく、タンパク質レベルでの相補機構が存在する可能性を見出した。
|