2022 Fiscal Year Research-status Report
新たな選択的細胞標識ツールの構築と神経回路・活動の細胞種間ネットワーク解析
Project/Area Number |
22K19481
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勢力 薫 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任助教(常勤) (90802918)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | アデノ随伴ウイルスベクター / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、神経科学研究においてin vivo遺伝子導入に利用されるアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、神経細胞の細胞種選択的に遺伝子を発現させる新たな細胞標識AAVツールの構築を目指している。独自に最適化した組み換えAAV内の調節性配列の配置を利用して、当該年度は主にドーパミン神経や、オキシトシン、バソプレシン神経に選択的な遺伝子発現を可能にするAAVの構築を行なった。その結果、オキシトシン神経については、視床下部室傍核において、90%以上の細胞種選択性で、オキシトシン産生細胞の80%以上を標識可能なAAVの構築に成功した。加えて、構築したAAVシステムを用いて、野生型マウスにおける視床下部室傍核のオキシトシン神経の軸索線維を蛍光タンパク質で標識し、顕微鏡全脳イメージング技術FASTを用いて撮像することにより、その軸索投射パターンを全脳レベルで解析することが可能になった。また、高発現量の蛍光タンパク質を要すると考えられる軸索投射の全脳イメージングにおいても、蛍光タンパク質発現細胞の90%以上がオキシトシン神経に限られていたことから、細胞種選択性に加えて導入遺伝子の発現効率も十分であると考えられる。他の細胞種については、現時点では90%以上の細胞種選択性に至らないものの、組み換えAAVに搭載する配列をさらに調整することで改善できる可能性を見出している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型マウスのオキシトシン神経に対して選択的に遺伝子導入可能なAAVシステムの構築に成功し、その軸索投射パターンを全脳レベルで解析することができたたこと、他の細胞種についても搭載する配列の調整により改善が期待できる結果を得ていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点では細胞種選択性が不十分なものについては、搭載配列の調整により改善されるか検証する。また、他のモノアミン神経系や神経ペプチド産生細胞についても細胞種選択的なAAVの構築と、野生型マウスにおける軸索投射パターンの解析を試みる。また、野生型マウスの同一個体において二種類以上の細胞種を多色の蛍光タンパク質で標識し、その軸索分布の細胞種間比較や、カルシウム感受性蛍光タンパク質を用いた多種細胞の神経活動計測が可能か検証する。
|
Causes of Carryover |
細胞種選択的AAVを構築する過程において、これまでに見出していた細胞種選択性を高めるための調節性配列の組み合わせについて、部分的に変更することで細胞種選択性を向上できる可能性を見出した。その検討結果は、他の細胞種を標的としたAAVの構築に必須であったため、当初構築を試みる予定であった他の細胞種を標的としたAAVの構築や、軸索線維を多色で識別して標識するためのAAVの構築、軸索投射の全脳イメージング解析よりも優先的に実施する必要が生じ、次年度使用額が生じる結果に至った。
|
Research Products
(1 results)