2023 Fiscal Year Research-status Report
イメージングと光操作を用いたクローズドループ制御による記憶の形成と想起
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22K19482
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
野村 洋 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (10549603)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 記憶・学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある神経回路の機能を調べるには、神経回路が欠損した場合の表現系を調べる実験や、神経回路の活動を詳細に調べる実験が有効である。こうした解析により、記憶や認知機能に必要な脳領域が特定され、それらの領域内の特徴的な神経活動が明らかになってきた。しかし、記憶や認知機能の処理における神経回路の詳細な活動の役割を因果的に検証することは困難であった。そこで本研究では、クローズドループ制御によって神経活動を精密に制御することで神経活動と記憶や認知機能との関係を明らかにする。 生後1日のマウスの大脳皮質にアデノ随伴ウイルスを注入し、蛍光カルシウムセンサーjGCaMP8mと赤色光感受性イオンチャネルChrimsonを大脳皮質広域に導入した。2ヶ月程度経過後、頭蓋を露出させ、表面をコーティングした。さまざまな感覚刺激を与えた時の大脳皮質広域の神経活動をin vivoカルシウムイメージングにより測定したところ、感覚刺激の種類に応じて異なるパターンの活動が観察された。こうした活動から刺激をデコードする実験系を構築した。さらに、カルシウムイメージングとオプトジェネティクスを融合し、赤色光を照射することで任意の箇所の神経細胞集団を活性化させた。その結果、光を照射した箇所選択的なjGCaMP8m蛍光強度の上昇が認められた。赤色光照射により、特定の空間パターンで大脳皮質を活性化させた。こうした活性化と嫌悪刺激を組み合わせて与えることにより、マウスは活性化だけで報酬欲求行動の減弱が認められた。一連の結果から、マウスが大脳皮質の特定の神経活動パターンを認識し、こうした活動を記憶の手がかりとして記憶を形成、想起できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、行動課題中のマウスの神経活動をin vivoカルシウムイメージングにより測定し、さらに同時にオプトジェネティクスを用いて神経活動を操作する、という点で高い技術レベルが求められる課題である。しかし、当初の計画通りにこれらの技術のセットアップを終え、こうした技術を応用して、記憶・学習に関わる神経活動の解明を進めることが出来た。一連の実験の進捗状況をふまえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、より早く、より高精度でクローズドループ制御を行えるように技術の改良を行う。イメージングデータの解析アルゴリズムの改良を進める。大規模なイメージングデータのうち、どのくらいまとめて判定を行うか、時間的にどの範囲のデータを判定に用いるか、ダウンサンプリングを行うか、1回の判定では精度が十分でない場合、複数の判定を組み合わせて最終的な判定を行うか、イメージングデータをそのまま判定に用いずに次元圧縮を行ってから判定に用いるか、どのような次元圧縮を行うかなどの検討を進める。
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Causes of Carryover |
条件検討を様々な実験を通じて共通の個体で行うことができたことや、消耗品を再利用できたことなどから、実験動物や手術のための消耗品などを節約できた。そのために次年度使用額が生じた。令和6年度は、これらをカルシウムイメージングやオプトジェネティクスを精度良く行うための物品に充てることで、研究の進展を加速させる。
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