2023 Fiscal Year Research-status Report
能動的向社会性は子育てから進化したか:霊長類視索前野の薬理・化学遺伝学的解析
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22K19486
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒田 公美 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90391945)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 社会行動 / 愛着 / 子育て |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度には霊長類マーモセットの向社会行動に関して2報の原著論文を投稿し掲載された。 (1)Calcitonin receptor(Calcr)発現ニューロンが局在する内側視索前野MPOAをGABA-A受容体アゴニストであるMuscimolで阻害すると、年下のきょうだいに対する養育行動(Alloparenting)が激減した。逆に、Calcrの脳内アゴニストAmylinをMPOAに局所投与すると、Alloparentingは増加した。しかし他の家族個体とのかかわりには影響がなかったことから、MPOAのCalcrシグナリングは養育行動に特異的な促進作用を持つことが示唆された。一方、オキシトシン受容体のアンタゴニストを局所投与すると、Alloparentingには変化がなかった一方、他の家族個体との身体的接触が半減した。したがってCalcrとオキシトシン受容体シグナリングはMPOAにおいて相補的な役割を持つことが示された。 (2)マーモセットの子の親や年長のきょうだいに対する「愛着」は人間と同様、選択的であり、かつ各相手個体の寛容性と感受性からなる「子育てスタイル」に応じて愛着行動を適応させることを示した。具体的には、親やきょうだいが子に対し不寛容であるとき、子は不安および回避行動を示し、子のDistress vocalizationに不感受である(なかなか救助しない)場合には子はその相手に対し回避行動を示した。さらに子が家族から離されて養育された場合には、子はこのように柔軟な愛着行動の適応を発達させることができず、誰に対しても回避的で、かつ年齢相応の自立ができないことも明らかとなった。これらの愛着行動の特徴は人間とよく似ており、家族で子育てするマーモセットが人間の親子関係のよいモデルであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年、本研究の成果を原著論文として2報投稿し採択された。若干当初想定と異なる方向性であるが、現在さらに続報を執筆中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度中に、マーモセット父親の性行動と養育行動に関する続報を1報、子マーモセットと家族との間のVocal communicationに関する論文を1報と、2報を執筆中であり、少なくとも1報は年度内に採択・発表予定である。この論文のAPCのため、残りの予算を使用する予定である。
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Causes of Carryover |
成果論文のうち2報がまだ採択に至っていない。そのため昨年度に掲載料が発生せず、次年度繰り越しとなった。次年度中には採択まで至る計画であり、繰り越し予算をこのために使用する。
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