2023 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子異常を原因とする発達障害におけるオリゴデンドロサイトの病態意義
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22K19498
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Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
永田 浩一 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, 部長 (50252143)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / 発達障害 / マウスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉性障害(ASD)や知的障害(ID)などの発達障害は人口の約10%に発症し、遺伝学的解析により、1000以上の責任遺伝子が報告されている。病態の本質は、神経シナプスの機能障害を基盤とする大脳皮質発達障害とされる。これまでの発達障害の病態メカニズム研究はニューロンに集中し、オリゴデンドロサイト(ODC)をはじめとするグリア細胞の病態意義に関しては殆ど不明なままである。私共は、電気穿孔法によるマウス子宮内胎仔脳遺伝子導入法を基軸として「発達障害責任遺伝子のin vivo/vitro病態解析バッテリー」を独自に構築して発達障害責任遺伝子の病態機能解析をおこなってきた。本研究では、このバッテリーを応用展開した「オリゴデンドロサイト解析バッテリー」を新規に構築し、発達障害をODC機能障害の視点から多面的に眺め直し、新規診断・治療法開発の端緒を見出すことを目的とした。 構築した「解析バッテリー」を用いて、発達障害の責任遺伝子でODCにも発現している分子の発現抑制(NRG1とDISC1)、及び病的バリアントの過剰発現(CD38とNRG1)を行った。その結果、NRG1とDISC1の発現抑制で、発達期大脳皮質でのODCの移動速度が減弱していた。また、CD38とNRG1の病的バリアントの一過性発現によりODCの形態が球状化し、移動速度の減弱が認められた。また、CD38とNRG1の病的バリアントによる細胞形態異常は、in vitroでの培養ODCでも認められた。また、遺伝子異常を模倣した時のODCの移動様式や形態変化をライブイメージ解析する実験系も確立した。 以上の結解析するODCの移動・形態変化を果より、「オリゴデンドロサイト解析バッテリー」は、ODCに焦点を当てた発達障害の病態研究に有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構築した「解析バッテリー」を用いて、発達障害の責任遺伝子でODCにも発現している分子の発現抑制(NRG1とDISC1)、及び病的バリアントの過剰発現(CD38とNRG1)を行った。その結果、NRG1とDISC1の発現抑制実験、および、CD38とNRG1の病的バリアントの一過性発現実験で、病態を説明できる結果が得られている。また、in vitroでの培養ODCを用いた実験も順調に進んでいる。以上の結果より、「オリゴデンドロサイト解析バッテリー」は、ODCに焦点を当てた発達障害の病態研究に有用である可能性が高いと考えられた。一方、ライブイメージ実験系の確立は完了しているが、ODCの形態・機能障害がニューロンに及ぼす影響についてさらに実験例を増やす必要があると考えている。一方、マウス行動実験もおおむね完了している。これらの現状から、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られた結果から、「オリゴデンドロサイト解析バッテリー」は発達障害の病態研究に有用であると考えられた。まだ解析した遺伝子の種類が少ないため、今後は、他の発達障害責任遺伝子についても解析を進め、この解析バッテリーの有用性確立のため、をさらに実験を重ねてゆきたい。
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Causes of Carryover |
統計処理を行うために、マウス行動解析の実験を繰り返す必要がある。そのために次年度使用額が生じた。
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