2023 Fiscal Year Research-status Report
癌免疫療法におけるPD-1-PD-L1/2経路の細胞群間格差の解析
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22K19515
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
沖山 奈緒子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10581308)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | がん免疫 / 免疫関連副作用 / マウスモデル / 乾癬 / ランゲルハンス細胞 / 筋炎 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
獲得免疫系の主体であるT細胞はprogrammed cell death-1 (PD-1)を発現し、樹状細胞などが発現するPD-L1、PD-L2より活性抑制を受ける。PD-L1は、癌細胞を含む非血球系細胞にも広く発現し、PD-L2は樹状細胞などの抗原提示細胞に主に発現している。PD-1は、T細胞やB細胞、γδT細胞など自然リンパ球、マクロファージでも発現する。PD-1-PD-L1/2経路は、自己免疫応答を抑える末梢性トレランス機構であり、癌細胞も、この経路を使って免疫による排除を回避しているため、多くの癌において、PD-1またはPD-L1の遮断抗体による癌免疫療法が有効である。 そこで臨床的課題となってきたのが、PD-1やPD-L1阻害によって人工的に引き起こされた自己免疫疾患の免疫関連副作用(immuno-related adverse event, irAE)である。irAEでは、肺、肝、大腸、腎、心、筋、皮膚など実質臓器から、甲状腺、膵島、副腎などの内分泌系臓器、脳や末梢神経などの神経系まで、全身の臓器に人工的な自己免疫疾患と言うべき病態が発生し、各臓器の機能を障害する。 本研究では、irAEとしての皮膚炎の一つである乾癬の発症に着目し、皮膚常在抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞が、PD-L1を介してγδT細胞活性化を抑制し、乾癬の発症を制御していることを、Langerin-cre PD-L1-LoxPコンディショナルノックアウトマウスを用いて示した(Tanaka R, et al. J Invest Dermatol. 2022;142(12):3167-3174)。また、irAEには自己免疫性筋炎も含まれるが、これが筋細胞自身が発現するPD-L1が制御しており、PD-L2は関与しないことも見出している(未発表)。一方、制御性T細胞上のPD-1もがん免疫療法では遮断されてしまうが、このことは細胞傷害性T細胞活性化をより後押しする可能性があることを、FoxP3-cre PD-1-LoxPマウスを用いた悪性黒色腫モデルにおいて示唆する結果を得ている(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子改変マウス交配を多く必要とするため、マウス繁殖に依存することから、予定より進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
人員やマウス飼育場所に課題があり、研究生・大学院生・ポスドクを育成して研究を遂行するとともに、施設において場所確保を行う。
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