2023 Fiscal Year Research-status Report
長鎖非翻訳RNAを標的とする変異KRAS肺癌の合成致死治療の開発
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22K19522
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 光夫 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (70467281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 一大 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40809810)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 変異KRAS / 長鎖非翻訳RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
変異KRASは肺癌において最も高頻度にみられるドライバー癌遺伝子である。しかし、EGFR変異などに対する分子標的治療薬と同程度の効果を示す薬剤の開発には至っていない。変異KRAS肺癌に対する治療薬開発のアプローチとして、合成致死が期待されてきたが、複数の研究が変異KRAS癌の合成致死遺伝子存在の可能性は低いことを示唆した。そこで、本課題はKRAS癌の合成致死の標的分子として非翻訳RNAの一つである長鎖非翻訳RNA(long non-cording RNA ; lncRNA)に着目した。本課題では、研究代表者が開発した不死化正常ヒト気管支上皮細胞モデルHBECを用いて、変異KRAS肺癌の合成致死標的となるlncRNAを同定する。さらにその機能を解明し、lncRNAを標的とする変異KRAS肺癌に対する合成致死治療薬の開発を目指す。 2022年度までに、変異KRAS発現を誘導した不死化正常気管支上皮細胞HBEC3-RIN2細胞を対象とする次世代シークエンス解析を実施した。結果、変異KRAS発現により発現が増加するlncRNAを複数同定した。2023年度、それらのノックダウンをアンチセンスオリゴにより試みるも、高い効率でのノックダウンが得られなかった。そこで、ノックダウン方法をRNA干渉に切り替えた。その結果、治療標的候補である2つのlncRNAを効率的ノックダウンすることに成功した。さらに、2つの肺癌細胞株A549とH2009 においてそれらのノックダウンが足場依存性および非依存性のコロニー形成を強く抑制することを見出した。2024年度は、それら2つのlncRNAのノックダウンによる肺癌細胞の増殖抑制作用の機序解明を目的とする実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
候補lncRNAのノックダウン実験において、まず、核内におけるlncRNAのノックダウン効率に優れるとされるアンチセンス法を試みた。理由は、lncRNAの多くは細胞質内よりも核内において機能することが報告されているからである。アンチセンスは核内へ移行し、標的lncRNAと相補的にハイブリダイゼーションすることによって核内の標的lncRNAのノックダウンが期待できるとされる。しかし、複数のアンチセンスオリゴをカスタム注文により作成し、細胞にトランスフェクションしたが効率的なノックダウンが得られなかった。そこで、ノックダウンの方法をRNA干渉法に変更した。同方法によるlncRNAのノックダウンは、核内のlncRNAのノックダウンは期待できないが、多数の既報論文において、RNA干渉法によるノックダウンが実施され、成功している。実際に、我々の実験においてもRNA干渉法によるノックダウンが成功しつつある。以上の経緯によりやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験から変異KRAS肺癌の治療標的候補として2つのlncRNAを見出した。今後は、それらのlncRNAのノックダウンによる肺癌細胞の増殖抑制作用の機序解明を目的とする実験を行う。具体的には主に以下を実施する。①これまでに使用した2種類の肺癌細胞株に加えて多数の肺癌細胞株において、増殖抑制作用を複数のアッセイにより確認する。方法としては、足場依存性増殖を比色ベースの生存アッセイおよび液体コロニーアッセイにて評価し、がん細胞のIn Vivoにおける悪性形質との相関が高いとされる足場非依存性増殖能を軟寒天中コロニー形成能にて評価する。② In Silico解析からlncRNAの標的マイクロRNAを探索する。さらに、それらの標的マイクロRNAが発現制御することが推測される遺伝子を探索する。③ プラスミドベクターにより、2つのlncRNAを不死化正常気管支上皮細胞(HBEC)において過剰発癌させ、悪性への形質転換能を評価する。
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Causes of Carryover |
候補lncRNAのノックダウン実験において、まず、核内におけるlncRNAのノックダウン効率に優れるとされるアンチセンス法を採用した。理由は、lncRNAの多くは細胞質よりも核内において機能することが報告されているからである。しかし、1種類のlncRNAに対して複数のアンチセンスオリゴを肺癌細胞にトランスフェクションしたが効率的なノックダウンは得られなかった。そこで、ノックダウン方法をRNA干渉法に変更した。同方法によるlncRNAのノックダウンでは、核内におけるlncRNAのノックダウンは期待できないが、多数の既報論文においてRNA干渉法によるノックダウンは成功している。実際に、我々の実験において、RNA干渉法によるノックダウンが成功しつつある。以上の経緯により、研究にやや遅れが生じたため次年度使用額が生じた。次年度は、以下の実験に使用する予定である。①これまでに使用した2種類の肺癌細胞株に加えて多数の肺癌細胞株において、増殖抑制作用を複数のアッセイにより確認する。② In Silico解析からlncRNAの標的マイクロRNAを探索する。さらに、それらの標的マイクロRNAが発現制御することが予測される遺伝子を探索する。③ プラスミドベクターにより、2つのlncRNAを不死化正常気管支上皮細胞(HBEC)において過剰発癌させ、悪性への形質転換能を評価する。
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