2023 Fiscal Year Annual Research Report
鉄代謝制御・変容と心臓生理機能・病態の連関解明とその分子基盤解明に挑む
Project/Area Number |
22K19533
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
尾池 雄一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90312321)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 鉄代謝制御 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢に伴い様々な臓器で増加する「鉄」蓄積と臓器機能低下との関連が示唆されているが、加齢に伴う鉄代謝の変容と加齢関連疾患発症の因果関係の分子機構は明らかになっていない。本研究では心生理機能、加齢変化、心不全などの心病態を対象に未解明の心筋細胞における鉄代謝とその変容の意義について、高齢マウスおよび遺伝子改変マウスを用いることにより生体の心筋細胞の鉄動態制御の解析を行った。3ヶ月齢(若齢)と24ヶ月齢(加齢)野生型マウスを用いて心臓における鉄量を解析より加齢マウスは若齢マウスに比べ、鉄量の明らかな増加を認めた。次にマウス心組織の鉄動態解析を行ったところ、加齢マウスの心臓における三価鉄は若齢マウスに比べ、明らかな増加を認めたが、逆に二価鉄の明らかな減少を認めた。このことからマウス心臓の加齢変化おける鉄の増加は三価鉄の増加が主体であることが明らかとなった。マウス心臓における加齢による二価鉄の変化に注目し、心筋細胞において二価鉄の増加した遺伝子改変マウスを用いて24ヶ月齢における心機能を解析した。心エコーによる心機能解析では加齢遺伝子改変マウスは加齢野生型マウスに比べ、心機能の明らかな亢進を認めたが、トレッドミル負荷実験では差異を認めなかった。また、体重当たりの心重量の増加、HE染色にて心壁肥厚、WGA染色にて心筋細胞の肥大、さらに心筋内毛細血管の増加を認め、mRNA発現解析では線維化マーカーに差異を認めなかった。以上より、加齢ともに心臓において減少する二価鉄を増加することにより心機能低下の抑制が明らかとなり、加齢における抗心不全作用の可能性が示唆された。しかし、mRNA発現解析において心不全マーカーANP、BNPの明らかな発現増加を認めており、心筋細胞の二価鉄の増加に伴うこれらの結果について今後さらなる検討が必要と考えられた。
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