2022 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ改変に基づく加齢卵子の”質”改善法の開発
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22K19598
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小池 誠一 富山大学, 学術研究部工学系, 特命助教 (10431686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 佑介 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (10586639)
石垣 美歌 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (60610871)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 老化 / 卵子 / ミトコンドリア / ラマン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
不妊症の主な原因は、卵子の“質”の低下であることから、卵子に注目した多くの研究が行われている。しかし、加齢マウスを用意しそこから卵子を得るためには時間と費用がかかることから解析が容易ではなく、これまで“質”が何を意味するのかはよく分かっていない。そこで、本研究では少量のサンプルから多くのデータを得られる新しい解析方法を検討し、ラマン分光法を用いることとした。ラマン散乱光は光が物質と作用し入射光から振動数がシフトした光のことである。そのシフトは物質に含まれる分子結合の固有振動数のため、物質の組成や構造を推測できる。細胞にレーザーを照射して得られる情報(ラマンスペクトル)からは、特定のタンパク質や核酸などの生体分子の機能に注目することは出来ないが、細胞を構成する全ての分子の状態を示す情報が得られる。 まずマウスでの加齢による卵子の影響を調べるために、6週齢と1年齢メスマウスから採取した卵子の正常発生率を比較したところ、胚盤胞までは大きな変化が見られなかったが、加齢卵子からの産仔数が有意に少なかった。この結果からマウスでも加齢によって出生率が低下すること、つまり加齢によって何らかの変化が卵子に起こっていることがわかった。 そこで次に、ラマン分光法を用いることでこの変化を検出できるかを調べた。若齢卵子と加齢卵子から得られたラマンスペクトルを比較したところ、いくつかのラマンシフトピークが加齢に伴って変化していることが分かった。その帰属を調べるとシトクロムCと脂質による変化であることが明らかになった。この結果から、ラマンスペクトルデータから卵子の“質”の判別できること、更に少なくともミトコンドリア機能が加齢に伴って変化していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵子のラマンスペクトルを計測できるシステムを確立し、実際に加齢卵子では若齢卵子と異なったデータが現れることを明らかにできた。この実験系では、個々の卵子から膨大なデータを得ることができるので、これまでの生化学的実験を行う時のように大量のマウスを用意して、そこから採卵する必要がなくなったため、動物実験倫理的にも、実験者としても効率的に研究が行えるようになり、とても良かった。今後もこのシステムを用いることで効率的にデータを得ることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢卵子のラマンスペクトルでシトクロムCと脂質に帰属するシグナルが増大していた原因を明らかにする。特に、シトクロムCはミトコンドリアの電子伝達系で働く分子であることから、加齢によってミトコンドリア機能に何かしらの変化が起こっていることが予想される。そこでこの変化の原因をラマン分光法を駆使することで調べていく。もしその原因が明らかにできればその機能を活性化させる低分子化合物の合成によって加齢卵子の若返りを目指す。
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Causes of Carryover |
技術職員を1名雇用予定であったが、他の予算で雇用することができたため、その分の予算が使用せず来年度へ繰越す。
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Research Products
(3 results)