2023 Fiscal Year Research-status Report
健診Big Dataを基盤とした味覚健康医療の創発
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22K19672
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
重村 憲徳 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40336079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
實松 敬介 九州大学, 歯学研究院, 講師 (70567502)
高井 信吾 九州大学, 歯学研究院, 助教 (30760475)
岩田 周介 朝日大学, 歯学部, 助教 (60780062)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 味覚 / ビックデータ / 味覚異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
味覚受容体は、口腔のみならず視床下部や消化管など様々な臓器で発現することから、味覚の異常は、口腔のみならず、全身の臓器でも味覚異常が生じて、栄養・摂食・嚥下障害や生活習慣病の発症原因となる可能性が示唆されている。しかし、この味覚異常発症の分子機構はほとんど不明である。そこで本研究では、この味覚異常発症の「真の原因」を明らかにするために大規模健診における味覚検査データと、それと紐付けされた約2000項目の健康Big Dataとの多元的な相関解析を行うことにより、味覚異常の原因因子(マーカー)を追求することに挑戦する。本研究により、世界初の「味覚健康医療」の創発: 味覚感受性の変化とその原因マーカーを指標・標的とした新規の全身健康改善法の開発へ繋がることが期待される。今年度は、(1)発痛物質プロスタグランジン類を合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害することで痛み・炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬ジクロフェナクに着目し、その味覚障害発症メカニズムの解明を試みた。この結果、ジクロフェナクは味細胞におけるCOX/プロスタグランジン合成酵素経路の阻害を介して慢性的に甘味/うま味応答成分の発現を低下させ、それに加えて、T1R2/T1R3に対する直接的な作用を介して急性的に甘味およびうま味細胞の応答を抑制している可能性が示唆された。(2)抗不整脈薬フレカイニドの影響についても解析を行なった。この結果、フレカイニドが短期および長期投与中にマウスのHClに対する反応を特異的に増強することが明らかとなった。この分子機構の解明にはさらなる研究が必要である。(3)健診データを用いた味覚感受性と疾病との相関解析も引き続き進めている。以上の結果より、ヒトにおける味覚障害発症の背景の一部が解き明かされ、その治療・予防法開発の糸口が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、味覚異常発症の「真の原因」を明らかにすることを目的とする。今年度は研究実績の概要にも述べたが、下記の研究成果等を論文として発表した。(1)発痛物質プロスタグランジン類を合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害することで痛み・炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬ジクロフェナクに着目し、その味覚障害発症メカニズムの解明を試みた。この結果、ジクロフェナクは味細胞におけるCOX/プロスタグランジン合成酵素経路の阻害を介して慢性的に甘味/うま味応答成分の発現を低下させ、それに加えて、T1R2/T1R3に対する直接的な作用を介して急性的に甘味およびうま味細胞の応答を抑制している可能性が示唆された。(2)抗不整脈薬フレカイニドの影響についても解析を行なった。この結果、フレカイニドが短期および長期投与中にマウスのHClに対する反応を特異的に増強することが明らかとなった。この分子機構の解明にはさらなる研究が必要である。(3)健診データを用いた味覚感受性と疾病との相関解析も引き続き進めている。以上のように、味覚障害発症の原因を複数明らかにしつつあることから、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに明らかにした結果について、さらに詳細に解析を進める。(1) Big Data相関解析の対象因子を絞って解析を進める。具体的には、味覚感受性と相関が予想される口腔内細菌叢、腸内細菌叢およびその関連因子に着目して解析を進める。味質毎(甘味、塩味、酸味、苦味)に、味覚閾値(約1000名)により高感受性群と低感受性群に分け、群間での口腔内因子, 血液因子, 尿中因子, 服用薬剤について相関解析を行い、有意差が認められる因子を炙り出す。次に、(2) 新3次元幹細胞組織培養法である味蕾オルガノイド解析を引き続き行う。24wellを用いて、マウスの味蕾幹細胞から味蕾オルガノイドを誘導する過程で、これまでに解析を進めている亜鉛やヒアルロン酸、これらに加えて上記で炙り出された因子やその阻害剤を単独または複合で添加し、その影響を調べる。さらに一歩踏み込み、原因因子と関与するターゲット分子をNCBIデータベースから推定し、そのsiRNAをもちいてGain/Loss of function を確かめる。vitroの研究データをさらに強めるために、(3) マウスにおける「味神経応答解析(鼓 索・舌咽神経)」および「飲水行動解析(短・長時間)」(in vivo):野生型マウス(WT)の味神経応答および飲水行動を原因因子投与群と非投与群間で比較解析する。必要な場合には、ターゲット分子の欠損マウス(KO)をもちいて、Gain/Loss of functionを確証する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Cellular mechanisms of taste disturbance induced by the non-steroidal anti-inflammatory drug, diclofenac, in mice.2023
Author(s)
Hirayama A, Iwata S, Oike A, Kawabata Y, Nagasato Y, Takai S, Sanematsu K, Takahashi I, Shigemura N
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Journal Title
Front Cell Neurosci.
Volume: 17
Pages: 1279059
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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