2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K19677
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
内田 薫 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 講師 (30724132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 哲昭 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (90235680)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ネグレクト / オキシトシン / 母乳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在、現象論の羅列に過ぎない育児放棄(ネグレクト)について、腸脳相関に関するエビデンスに着目し、腸内フローラの破綻がネグレクトの原因ではないかとの仮定のもと、ネグレクトマウスにおける腸内フローラを解析し、ネグレクト回避のための腸内環境を構築することを目的とする。 令和5年度は、腸内フローラの解析とネグレクト回避のための腸内環境を構築するマウスの選定(モデル化)とその解析を行った。新たに導入したオキシトシンヘテロ欠損マウスは、見かけ上、正常に妊娠・分娩を行う。しかし、分娩後7~12日における母乳中のオキシトシン濃度は、野生型に比べ平均19.4%に減少していた。このオキシトシン含量の少ないオキシトシンヘテロ欠損マウスの母乳で哺育された雌マウスを成熟させ、妊娠・分娩後の育児行動を観察した。分娩後5日目の仔の生存率は驚くべきことに0%であり、極めて強いネグレクト様行動を示した。この結果は、将来の育児行動の発現は母乳中のオキシトシンが制御しており、オキシトシン摂取の低下は将来のネグレクトを招くことを示している。この育児行動を全く示さないオキシトシンヘテロ欠損マウスの母乳で哺育された雌マウスをネグレクト回避の腸内環境構築のためのネグレクトモデルマウスとして今後使用する。また、今後ネグレクトモデルマウスの対照として用いる野生型マウスの様々な生理的環境や栄養状態における解析用の糞便の採取を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腸内環境の再構築による育児放棄予防の解析を進める上で必要なネグレクトマウスとして、当初はプロラクチン(PRL)シグナルの受容に障害を持つマウスを使用することを考えていた。一方、研究分担者の下川らは、母乳中のオキシトシン(OXT)が将来の育児行動を発現させるために必要であることを「低OXT母乳」の投与により見出した。さらに、母乳中のOXT含量の少ないOXTヘテロ欠損マウスの母乳で哺育された雌マウスは将来自らが親になった際、育児行動を全く示さないことを見出した。この発見によりネグレクト回避の腸内環境構築のための新たなネグレクトマウスのモデル系が確立できた。しかし、OXTヘテロ欠損マウスの作出から交配、妊娠維持、分娩、授乳、仔の離乳、成熟、交配、分娩、育児行動の観察と実験の1サイクルが6ヶ月間にも及ぶ。これらの作業により当初予定していた研究の進展が「やや遅れている」となった。
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Strategy for Future Research Activity |
ネグレクトマウスの選定とそのモデル化に成功した。今後は当初の予定通り、腸内フローラの解析を進める。ネグレクトマウス(OXTヘテロ欠損マウスの母乳で哺育された雌マウス)および正常育児マウスの周産期における様々な時期の糞便を採取し、腸内フローラを網羅的に解析する。また、採取した糞便から腸内フローラの安定に必要な分泌型IgA(sIgA)をELISA法で測定する。それらと並行しながら、プロ-およびプレ-バイオティクス投与による腸内フローラの再構築に関する実験として、腸内環境を整えるとされる生菌や食物成分から投与物を選定するために、非妊娠時マウスを用いてストレス負荷に対する行動変化を評価し、効果を比較する。投与物決定後、ネグレクトマウスに投与を行う。一方、便移植の技術訓練も進めていく。
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Causes of Carryover |
ネグレクトマウスの選定とモデル化に時間を費やした関係で、当初予定していた糞便の採取・解析まで到達しなかったことや、新型コロナ感染症の影響により、研究協力者との対面での打ち合わせができておらず、旅費が生じなかったことで、次年度使用額が生じた。 次年度(最終年度)は、本来予定していた実験に加え、やや遅れをとった実験操作の遂行、研究打ち合わせの実施により、次年度請求分と合わせて使用されるため、大幅な計画の変更は必要ないと考える。
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