2022 Fiscal Year Research-status Report
胎児期の化学物質曝露による後発的疾患の多面的ゲノム解析に基づく新規予防医学の探索
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22K19678
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
鈴木 武博 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (60425494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳澤 利枝 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主幹研究員 (70391167)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 妊娠期曝露 / ヒ素 / DNAメチル化 / 後発影響 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、妊娠8~18日まで85 ppmの亜ヒ酸ナトリウム (ヒ素、NaAsO2)を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔を、個体識別し、飼育を開始した。同一個体ごとに、離乳時から74週齢まで16週ごとに、糞便及び、尾から血液を経時的に採取する計画であり、現在、48週齢での血液及び糞便の採取をおこなっているところである。またQIIME2を用いた腸内細菌叢解析法について、トリミングの過程におけるクオリティスコアなどの条件を精緻化した。 精緻化した解析法を用いて、33週齢における対照群オスとヒ素群オスでの腸内細菌叢解析をおこなった。予備的な検討ではあるが、ヒ素群では、α多様性が減少傾向であり、個体によって細菌叢の組成が異なる傾向があることがわかった。また、Taxonomy解析により、特定の個体は、肝発がんに関与する腸内細菌叢が変化していることもわかった。今後、経時的なサンプル採取と解析を続けていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、妊娠8~18日まで85 ppmの亜ヒ酸ナトリウム (NaAsO2)を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔を、個体識別し、飼育を開始した。また、QIIME2を用いた腸内細菌叢解析法について、トリミングの過程におけるクオリティスコアなどの条件を精緻化した。予備的な検討ではあるが、33週齢における対照群オスとヒ素群オスでの腸内細菌叢解析をおこない、ヒ素群では、多様性が減少傾向であり、個体によって細菌叢の組成が異なる傾向があること、また、Taxonomy解析により、特定の個体は、肝発がんに関与する腸内細菌叢が変化していることを明らかにできたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、妊娠8~18日まで85ppmのヒ素を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔で検討を続ける。同一個体ごとに、離乳時から4か月ごとに、糞便及び、尾から血液を経時的に採取する。74週齢での肝がんの有無と対応させ、各週齢の糞便及び血液からDNAを抽出する。DNAメチル化解析は、網羅的なメチル化解析法の1つであるReduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)法で実施する。対照群に対してヒ素群でメチル化が10%以上上昇または低下したCpGをDifferentially Methylated Cytosine (DMC)とし、各CpGのannotation の付与はHomerで行う。糞便中腸内細菌叢は、16S rRNAのV4領域を次世代シーケンサーでシーケンスし、QIIME2を用いた相同性検索及び系統分類解析を実施する。これらの経時的な解析から、持続したDNAメチル化変化X及び腸内細菌叢変化Yを探索する。持続した変化X及びYが見つかった場合、遺伝子の発現調節に関する分子や、腸内細菌産生物や代謝物の機能について、細胞増殖などがんの形成及び進行への影響に焦点をあて細胞株を用いて解析する。 以上から、生後の環境要因による変化を乗り越えて持続する血液DNAメチル化変化及び腸内細菌叢変化を解析し、胎児期ヒ素曝露による後発的肝がん発症の直接的なメカニズムの一端を解明する。
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Causes of Carryover |
他の実験計画で交配したマウスから産まれた仔が多かったため、それらのマウスを使用し、交配やヒ素曝露をおこなった。その結果、本研究課題に必要な仔マウスの匹数が確保できたため、本研究課題で妊娠マウスを購入する必要がなくなり、次年度使用額が生じた。次年度は、ゲノムDNA抽出試薬、次世代シークエンス用ライブラリ作成試薬、DNAメチル化解析の受託費などに助成金を使用予定である。これらの経費は、申請者らがこれまでに行ってきた先行研究・予備検討における消耗品リスト、並びにカタログ記載の単価をもとに算出している。また、旅費や人件費にも使用予定である。旅費については、申請者の所属する国内外の学会で成果発表をし、さらに関連分野の情報収集および人脈構築をおこなうため、申請者らのこれまでの事例をもとに算出している。人件費については、実験補助員を雇用するために使用予定であり、実験補助員の年間の雇用は研究代表者が関与する他の研究費と合わせて行う。
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