2022 Fiscal Year Research-status Report
積極的孤立は健康悪化につながるか?―社会科学的・神経科学的検討―
Project/Area Number |
22K19702
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
桜井 良太 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00749856)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 塁 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員研究員 (20793326)
藤原 佳典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50332367)
桜井 政成 立命館大学, 政策科学部, 教授 (90425009)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 社会的孤立 / 積極的孤立 / 高齢者 / 精神的健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多くの疫学調査から明らかになってきている「社会的孤立が引き起こす健康状態の悪化」が、他者との関わり合いに関する嗜好性(他者との積極的なかかわりを好むか否か)の違いにより、どのように変化するか明らかにすることを大きな目的とする。本年度は他者との関わり合いの嗜好性が高齢者の精神的健康度に与える影響を横断的に検討した。研究では615名の地域在住高齢者に対し、社会的孤立の有無(他者交流の頻度から定義)、独り好き傾向の有無、人付き合いに対する煩わしさの有無を調査するとともに、精神的健康度(ウェルビーイング尺度であるWHO-5と、抑うつ尺度であるGDS)を測定した。研究参加者の25.7%が社会的孤立に該当した。このうち、独り好きの割合は46.2%、人付き合いが煩わしいと感じている者の割合は43%であった。社会的孤立、独り好き、人付き合いに対する煩わしさを要因とした3要因の分散分析の結果、WHO-5とGDSともに、社会的孤立と人付き合いの煩わしさの要因に有意な交互作用が認められ、社会的孤立している者で、かつ人付き合いが煩わしいと感じている者ほど精神的健康度が悪い傾向が認められた。本研究から、従来報告されている社会的孤立と精神的健康悪化の関連には人付き合いに対する嗜好性が関与しており、社会的孤立に該当する者であっても他者との関わり合いに肯定的である者は精神的健康度がある程度保たれる傾向にあることが分かった。以上から、社会的孤立を一律に健康リスクと捉えることには注意が必要であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎調査となる横断研究は終了しており、脳研究に関しても準備が進んでいる。以上から本研究は概ね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は調査対象年齢を広げ、インターネット調査によって人付き合いに対する嗜好性と精神的健康度の関連を検討する。加えてfMRIを用いたメカニズム研究に関しても昨年に続いて遂行していく。
|
Causes of Carryover |
当初行う予定であったfMRI実験が共同研究施設の都合上、本実験の実施を次年度に変更した。また、インターネット調査に関しても、調査票の調整が共同研究者都合のため進めることが出来なかったため、実施を次年度に変更した。以上から次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(3 results)