2023 Fiscal Year Research-status Report
肝臓-脳連関に着目した 新たな認知症先制治療戦略 の探索
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22K19710
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山崎 雄 広島大学, 医系科学研究科(医), 特定准教授 (70866243)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / APOE |
Outline of Annual Research Achievements |
APOE遺伝子には3つの主要多型(APOE2、E3、E4)がある。そのうちAPOE4は最も強いアルツハイマー病リスク遺伝子であり脳アミロイド病理を悪化させることで認知症発症を促進する。本研究では、APOEを豊富に発現する肝臓に焦点をあて“肝臓のAPOE4発現は脳アミロイド蓄積の促進因子か?というきわめてユニークな問いを多面的な動物モデル実験を行うことで検証する。具体的には、認知症リスクの上昇しないAPOE3を対照とし▼肝特異的なAPOE4遺伝子導入を行い脳Aβ病理が促進されるかを決定し(目的1)▼肝特異的なAPOE4発現抑制を行い脳Aβ病理が抑制されるかを決定する(目的2)。そのために3年間で以下の研究を行う。すなわち①肝特異的なAPOE4発現マウスの作出②肝特異的なAPOE4発現マウスにおける脳アミロイド/背景病態の解析③アンチセンスオリゴ投与による肝特異的なAPOE4発現抑制方法の確立④肝特異的なAPOE4発現抑制マウスの作出と脳アミロイド病理の解析である。令和5年度はそのうち①と③を遂行した。①肝特異的なAPOE4発現マウスの作出:臓器特異的にAPOE4を発現するようデザインされたマウスが樹立された。現在コロニーの拡大を進め②を行うための準備を進めている。③アンチセンスオリゴ投与による肝特異的なAPOE4発現抑制方法の確立:申請者らは培養細胞に対し効果的な分子APOE抑制効果をもつASO配列をすでに同定している。令和5年度は前年度に引き続きそのASO配列が生体内でも同様のAPOE抑制効果を示すかの検証を行った。具体的にはマウスに肝臓特異的なASO投与を行いAPOEのmRNA発現量をリアルタイムPCR検査により比較・定量する予定であった。投与方法/条件の最適化を行ったがASO投与による生体投与毒性が高く必要な研究コホートを構築することが困難なことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記概要に記したように本研究課題は①-④の研究項目から構成されている。令和5年度は、①③を遂行することが計画されていた。以下に再掲するようにこれらの研究計画は概ね予定通りに開始できた。そのため全体の進捗としては「おおむね順調に進展している」と考えられる。なお③については実験を行った結果今後の展開(④の遂行など)が困難であると考えられる。そのため申請書の代替案に記載の通りAPOE4をAPOE3に変換することによりその発現抑制を行う計画へ移行予定である。①肝特異的なAPOE4発現マウスの作出:臓器特異的にAPOE4を発現するようデザインされたマウスが樹立された。現在コロニーの拡大を進め②を行うための準備を進めている。③アンチセンスオリゴ投与による肝特異的なAPOE4発現抑制方法の確立:申請者らは培養細胞に対し効果的な分子APOE抑制効果をもつASO配列をすでに同定している。令和5年度は前年度に引き続きそのASO配列が生体内でも同様のAPOE抑制効果を示すかの検証を行った。具体的にはマウスに肝臓特異的なASO投与を行いAPOEのmRNA発現量をリアルタイムPCR検査により比較・定量する予定であった。投与方法/条件の最適化を行ったがASO投与による生体投与毒性が高く必要な研究コホートを構築することが困難なことが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度も応募時の申請書に記した内容に沿って遂行する。具体的には、上記①APOE-floxマウスと交配するCre-loxpマウスの導入と繁殖を進める。その後APOE-floxマウスとCre-loxpマウスの交配、アミロイドマウスモデルとの交配を進めアルツハイマー病関連形質を解析する。上記③④についてはよりヒト外挿性の高い結果が期待できるモデルが樹立されたため①②と統合して解析を進める。
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Causes of Carryover |
前述の通り、令和5年度は前年度に引き続きそのASO配列が生体内でも同様のAPOE抑制効果を示すかの検証を行ったが、投与方法/条件の最適化にもかかわらずASO投与による生体投与毒性が高く必要な研究コホートを構築することが困難であった。そのため、ASO合成費、マウスコホート構築費に計上していた予算額が予定を下回ったため。一方で、よりヒト外挿性の高い結果が期待できるモデルが樹立されたため①②と統合して③④の解析を進める予定であり、①APOE-floxマウスと交配するCre-loxpマウスの導入と繁殖、APOE-floxマウスとCre-loxpマウスの交配、アミロイドマウスモデルとの交配、アルツハイマー病関連形質の解析費に、次年度予算として充てる。
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