2023 Fiscal Year Annual Research Report
グリコバイオロジーを駆使した細胞スローサイクリングによる老化予防薬の開発
Project/Area Number |
22K19712
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 老化 / 細胞周期 / 希少糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、老化を「細胞レベルで生じる疾患」と捉え、細胞老化 (cellular senescence) の分子機構の解明が世界レベルで進んでいるものの、有効な老化予防法は開発されていない。これに対して本研究では、単糖類である希少糖・D-allose によって生じる「細胞周期の減速(細胞スローサイクリング)」が、細胞老化を抑制することを細胞・生体レベルで実証し、全く新しい視点の老化予防薬開発につなげることにチャレンジする。 研究期間の2年間においてD-alloseが培養ヒト細胞周期を停止(静止)させることなく周期速度を減速させることを実証し、特許出願した(現在、国際特許の出願に向けて準備中)。さらに、細胞周期の変化で異なる蛍光を発色する Fucci ベクターを培養細胞に導入し、電動倒立顕微鏡蛍光タイムラプスを用いて細胞周期を可視化できる実験システムの構築を実施し、D-allose が細胞スローサイクリングを生じることをシングルセルレベルで可視化することにより実証した。また、D-allose を投与後の細胞内への D-allose取り込みをHPLC法で実証し、フラックスアナライザー(プライムテック社)を使用して、D-allose によるミトコンドリア呼吸と解糖系の細胞内エネルギー代謝への影響を同定した。 一方、C57BL/6マウスの老化モデルは1年以上の経過観察が必要であるため、初年度の早期から飼育を開始しており、最終年度の2023年度中盤に約60週例からD-alloseの400 mg/kgの連日投与を開始した。現在、まだ検証の継続中である、特許出願の可能性を検討するデータを取得している。 以上、本研究によりD-allose の「細胞スローサイクリング」を介した細胞老化の予防効果を細胞・生体レベルで強く示唆するデータが得られ、特許出願につながった。本研究成果は新しい概念の老化予防薬の開発につながるものであると考える。
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Research Products
(7 results)