2022 Fiscal Year Research-status Report
ダンスにおける音楽性とは何か~複合的アプローチによる質的要因分析~
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22K19748
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
水村 真由美 (久埜真由美) お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60292801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40205737)
橋本 有子 お茶の水女子大学, 教学IR・教育開発・学修支援センター, 講師 (50826972)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 音楽性 / 舞踊動作 / 身体表現 / 定量的分析 / 定性的分析 / 稚拙性 / 鑑賞 / 印象特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダンスの質的個性およびスキルを「音楽性」から検証することを目的とする。舞踊動作のスキルを語る際に「音楽性musicality」といった言葉が広く使われるが、音楽性の概念については不明な点が多い。そこで本研究は、「主観的な経験知に基づき体系化された観察に依拠する定性的分析(Laban/Bartenieff Movement Studies/System:LBMS)」および「客観的な三次元動作解析(モーションキャプチャー)を用いた定量的分析」という異なる動作分析手法を用い、音楽情報との関連から舞踊動作の音楽性をその稚拙さを基準に検証する。 本研究では、歴史的に音楽との関連が深いバレエを研究対象とする。バレエの基礎技術および舞台作品での表現動作を対象とし、LBMSとモーションキャプチャー分析から検出可能な動作特性を、別途実施する印象感性実験から得られた感性情報を手がかりに検証する。音楽と動作との関係性は、音楽の拍と動作特徴点の時間ずれといった従来の局所的なリズムに関わる視点に加えて、大局的な視点として楽曲のメロディやフレーズに相当するリズム構造とダンス動作の時系列構造の関係性を詳細に分析する。なお身体表現の稚拙さは巧緻性と比較し個人差が小さいことを仮定し、スキルおよび音楽性の低さに共通する法則を検出する。 定量的分析(三次元動作解析)と定性的分析(LBMS分類による評価)を音楽と共に行う舞踊動作について実施し、鑑賞による感性実験としては音楽の有無で2条件を設定することにより、動作の時間空間的なスキルとしての音楽性を検出し、定性および定量評価の検出精度が高い印象尺度を抽出することを目的とする。さらに,音楽性の優劣が想定されるCGダンス映像を構成しCG映像に対する印象評定実験を行うことにより、本研究で抽出した音楽性に関わる動作因子が、鑑賞者の印象を決定づけることを再検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、舞踊で行われる基本動作を音楽のリズムと異なる協調パターンで実施した際の音楽と動作の運動学的特性との関連を検討した。対象は,バレエ経験が平均19.5年以上のプロ2名を含むバレエダンサー10名であった.課題動作は,クラシックバレエの基本の一つであるタンジュ(立位で股関節外転(屈曲)動作を足部が床に接地したまま繰り返す動作)とジュッテ(タンジュと同じ動作を足部が床から離れるまで行う動作)とした.60BPMのメトロノーム音に合わせて,外転0度(内取り)および最大外転位(外取り)に拍を合わせる2条件で24回繰り返して実施した。対象の全身35ヶ所に反射マーカーを貼付し,8台の赤外線カメラ(VICON MX, Vicon Motion Systems, 250 Hz)と1基の床反力計(Kitsler, 1000 Hz)を用いて計測した。解析項目は、タンジュ(内取り・外取り),ジュッテ(内取り・外取り)計4条件での第Ⅱ中足骨頭マーカー(以下、趾先)の変位と床反力(左右方向)のピーク値出現との時間差の平均値とその標準偏差とした. その結果、タンジュでは内取り・外取り両条件で,床反力左右方向のピーク値は趾先変位に先行して出現した.一方,ジュッテでは音と趾先の挙動との関係性は個人差がみられた。タンジュでは外取り条件に比較して内取り条件でピーク値と拍との時間差が有意に短く,より音に同調している可能性が示されたが,ジュッテの条件間やタンジュとジュッテに関しては有意差を認めなかった.タンジュの結果は、身体重心の移動に先行して起きる予測的姿勢調整(Honeine JL,2016)を示唆した。なおジュッテで音楽の拍の取り方による違いがみられなかったことから運動の自由度が拍との関係性に影響を及ぼす可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、定量的に舞踊動作と音楽の拍との関係性を検討する実験を行い、基本的な知見を得ることができた。本研究は、下記の3つの調査から構成され、舞踊動作の音楽性を、定量的および定性的に分析し、両者の関係性から動作の音楽性を検証しようと試みるものである。 なお今年度は、定性的分析を担当する分担研究者の橋本が産休育休取得のため、研究から離れていた。次年度以降に職場復帰した後には、今年度取得した舞踊動作画像のうち、デジタルビデオ画像を利用して、下記の調査(2)となる定性的分析(ラバンバーテニエフムーブメントアナリシス)を実施すると共に、同じ画像を用いて動画鑑賞から受ける印象評価実験(下記の調査(3))を行い、動作の円滑さや稚拙さといった質的印象の得点と、有資格者が行う定性分析および今年度行った定量分析から得た結果の関連性を検討する。 (1)定量的動作評価:モーションキャプチャーシステムを用い、身体各部位37箇所に装着したマーカーの位置情報から運動学的指標(角度、速度、加速度、躍度)を算出する。動作は音楽と同期して記録し、音楽との時間的関係性を相互相関係数により評価する (2)定性的動作評価:デジタルビデオカメラにより(1)と同じ動作を撮影した映像を用いてLBMSの有資格者(橋本)がLBMSの動作要素の分類に沿って定性的に評価する。 (3)動作の印象評定実験:若年男女100名を対象に、映像を用いて舞踊動作の質的評定尺度(猪崎、2004)および「スキル」「魅力」「好み」「審美性」「音楽性」を評定尺度に印象実験を行う。映像は、音楽有りと無しの2条件を設定し、音楽の影響を検証する。
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Causes of Carryover |
分担研究者の橋本が、育休による中断に伴い今年度の分担研究費を次年度に繰り越した。またそれに伴い、当該年度に実施予定であった調査および解析も次年度に繰り越す形となったことから、次年度の確実円滑な研究の遂行に必要な経費として次年度使用額が生じた
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