2022 Fiscal Year Research-status Report
運動に伴う骨格筋-脳の臓器連関を制御する分子としての骨格筋AMPキナーゼの可能性
Project/Area Number |
22K19750
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 達也 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (00314211)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 達郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (00722331)
横川 拓海 京都大学, 農学研究科, 助教 (80844323)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 骨格筋 / 脳 / 運動 / AMPキナーゼ / マイオカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、先行研究により脳機能に関わることが示唆されているマイオカインの発現制御における骨格筋AMPキナーゼ(AMPK)の関与を検討した。 運動によるマイオカインの発現応答に骨格筋AMPKが寄与している可能性を検討するために、野生型ならびに骨格筋特異的AMPKαドミナントネガティブ変異体発現(AMPK-DN)マウスを非運動群および運動群(ホイールランニング)に分けて4週間飼育した。介入終了後、足底筋におけるマイオカインの遺伝子発現量を測定した。その結果、運動介入により脳由来成長因子(Bdnf)の有意な増加ならびにfibronectin type III domain containing 5(Fndc5)の増加傾向が観察されたものの、遺伝子型による変化は観察されなかった。Cathepsin B(Ctsb)に関しては、野生型で運動による有意な増加が観察された一方で、AMPK-DNマウスにおいては運動による増加が消失していた。インスリン様成長因子1(Igf1)の遺伝子発現量に関しては、運動ならびに遺伝子型による影響は観察されなかった。以上より、脳機能関連マイオカインの内、Ctsbの運動による増加に関して、骨格筋AMPKが寄与していることが示唆された。 また、骨格筋の不活動によるマイオカイン発現量変化におけるAMPKの関与を検討するため、野生型ならびにAMPK-DNマウスに除神経手術を施し、7日後の足底筋におけるマイオカインの遺伝子発現量を測定した。その結果、除神経脚では偽手術脚に比して、Fndc5の有意な低下、Ctsbの有意な増加、Bdnfの増加傾向が観察されたが、遺伝子型による影響は観察されなかった。以上より、タイムコースなどの詳細な検証が必要であるものの、除神経による脳機能関連マイオカインの発現応答には、骨格筋AMPKは関与していないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究により脳機能への関与が示唆されているマイオカインの発現に関して、骨格筋AMPKが関与していることを生体レベルで明らかとすることができたため、上記の判断に至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、運動トレーニングによる脳の健康増進に対する骨格筋AMPKの寄与を検討する。 野生型ならびにAMPK-DNマウスに対して、自発性走運動を施す。運動期間終了後、情動・学習に関わる行動解析(オープンフィールド試験・高架式十字迷路試験・強制水泳試験・Y迷路試験・バーンズ迷路試験)を実施する。その後、分子機序の探索を目的として、脳サンプル(海馬・大脳皮質など)を用いてreal-time PCRならびにウェスタンブロッティングによる生化学解析を実施し、シナプス分子・成長因子・最初期遺伝子などの遺伝子・タンパク質発現量を測定する。その後、生化学解析において変化が観察された分子に関して、組織学解析を行い、より詳細な応答領域の探索を実施する。
|
Causes of Carryover |
本年度に実験を行う過程で、次年度に実施予定の生化学実験、及び組織学実験において、物価上昇のため、想定していたよりも多くの使用額が生じる可能性が高いことが明らかとなった。このため本年度の実験において、試薬や消耗品の使用量をあらためて検討し、節約が可能なものについてはできるだけ使用量を抑えることを行って、意図的に次年度使用額を発生させた。このように次年度使用額は物価上昇による相対的な研究費減少に対応するものであり、次年度中にすべて使い切る予定である。
|
Research Products
(3 results)