2023 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of blood-based biomarkers to reflect age-related changes in biological membrane
Project/Area Number |
22K19762
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
木村 展之 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (80392330)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | バイオマーカー / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した血漿由来細胞外微小胞(EV)のプロテオーム解析では、イムノグロブリンなど血液由来蛋白質の混入が認められた。そこで今年度は検索手法の更なる改善と研究結果の再現性を検証するため、ビーズ法を用いて血中由来蛋白質を除去したのちにカニクイザル血漿由来EVのプロテオーム解析を実施した。その結果、昨年度とほぼ同様の結果が確認されたとともに、老齢カニクイザルの血漿から回収したEVではApolipoprotein A-I(ApoA-I)の有意な上昇が確認された。 ApoA-Iは主に肝臓や小腸で産生されるアポリポ蛋白質であり、HDLの主要構成因子として知られている。このため、霊長類の体内では老化に伴い脂質代謝系の変化が生じている可能性が極めて高いと考えられる。また、ヒトでは血中ApoA-Iの上昇が認知機能低下と相関するという報告があるため(Ma etal., Biomed Res Int. 2015)、ApoA-Iは全身性の老化のみならず脳神経の老化とも関連性が高いと考えられる。ApoA-Iと同様にHDLを構成し、脳内のコレステロール輸送と代謝を担うApoEがアルツハイマー病の強力なリスク因子であるという事実を鑑みると、老化メカニズムにおける脂質代謝の重要性が強く示唆された。今後は、脳神経系も含めた全身臓器におけるApoA-Iの分子病態学的意義を検索するとともに、老化に伴う脂質代謝変容の分子基盤解明を目的とする研究活動を展開したいと考える。 一方、カニクイザル血漿由来EVでは、Pregnancy zone proteinなど性腺由来蛋白質の有意な減少が確認された。生殖器の機能が老化に伴い低下することは周知の事実であるが、今回の研究成果により、血漿由来EVは生殖機能の低下を評価するための新たな検索系として利用できる可能性が考えられる。少子高齢化が進む我が国において、生殖機能の低下をいち早く察知することは適切な介入を行うために重要であり、今回確立した手法により貢献が期待できる。
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