2023 Fiscal Year Research-status Report
組合せ的前処理と量子アニーリングの融合による行列計算の加速手法
Project/Area Number |
22K19772
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 有作 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20362288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武永 康彦 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20236491)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 行列計算 / 固有値問題 / 組合せ的前処理 / 量子アニーリング / D-Wave |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,量子アニーリングマシンと古典計算機を組み合わせたハイブリッド環境により,行列の対角化(固有値計算)や連立1次方程式の求解などの応用上重要な行列計算を加速することを目的としている.今年度の研究では,昨年度に引き続き,実対称行列向けの固有値解法であるブロックヤコビ法を対象として,組合せ的前処理による収束加速の研究を行った.ブロックヤコビ法では,非対角ブロックの消去前に,行と列の置換によって絶対値の大きい要素を対角ブロックに集中させることで,収束を加速できる.最適な置換を求める問題は組合せ最適化問題であり,昨年度の研究では,この問題をQUBO(0-1変数無制約最適化問題)として定式化し,量子アニーリングマシンD-Wave Advantage上で実装して,実際に解を求められることを示した.しかし,QUBOをD-Wave Advantageの量子ビットネットワークに効率的にマッピングすることが困難であり,解ける問題は最大12×12程度の小さい行列のみに限られていた.
今年度はこのマッピングについて主に研究し,マッピングの困難が,我々のQUBOが持つ0-1変数間の大域的接続構造によることを見出した.そこで,定式化の方法を再検討し,Domain-wall encodingと呼ばれる手法を用いた新しいQUBOの定式化を提案した.この定式化では,0-1変数間の接続が局所的であり,同じく局所的な接続のみを持つD-Wave Advantageのネットワークへのマッピングがより容易である.この新しいQUBOについてマッピングを行ったところ,マッピングに使う量子ビット数を,最も効果があるときで従来法の2/3程度に削減できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,昨年度に開発したブロックヤコビ法向けの組合せ的前処理法について,D-Wave Advantage上での効率的な実装の困難の原因を解明し,効率性を向上させた新しいQUBOの定式化法を提案した.また,提案手法が従来法より少ない量子ビットでマッピングできることを実際に示した.したがって,研究は順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に開発した新しいQUBOの定式化法の性能を様々な例題により評価する.また,さらに効率的な定式化法を検討する.さらに、次世代のD-Waveマシンに対して効率的なQUBO定式化法とそのマッピング手法を検討する.
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Causes of Carryover |
2023年度はGPU搭載ワークステーションの購入を予定していたが,研究戦略上,量子アニーリングマシンでのアルゴリズム開発を優先して行うことにしたため,計算機環境としてはクラウド利用可能な量子アニーリングマシンを主に利用した.GPU搭載ワークステーションは2024年度に購入する予定である.
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