2023 Fiscal Year Research-status Report
食事の進行状況に応じた食物内の糖分・塩分量の設計による味印象変化手法
Project/Area Number |
22K19786
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伴 祐樹 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任講師 (20789391)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
割澤 伸一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20262321)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 味覚 / 順応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,食べ進めることによって甘味や塩味等の味が変化する食物を設計することにより,食事の進行状況に応じて食物に含まれる糖分・塩分量を操作することで,食事全体を通じての食物の味に対する印象を変化させる手法を構築することを目的とする. 2023年度は,2022年度に実装した飲料の糖度調整デバイスを用いた実験を行い,食事進行状況のそれぞれの時点における飲料の濃度や,その間の濃度変化の仕方を操作することで生じる全体を通じての味の評価の違いを収集し,全体で含まれる糖分量が同量あっても,甘みに対する印象や飲食に対する満足感がより高くなる最適な濃度変化について検証を行った.実験には甘味濃度をコントロールしやすいため,ショ糖溶液を用いた.実験の結果,15秒間の間にショ糖濃度を3.76%から5.64%に上昇させると,総糖分量が同じであっても一定,下降条件と比べると全体として知覚させる甘味が高まることが確かめられた. 加えて,本結果で効果が確認された緩やかに糖度を上昇させる手法(上昇手法)と,先行研究で効果が確認されていた, 濃度を反復的に上昇・加工させることで甘味を上昇させる手法(パルス手法)を比較する実験を行った.その結果,知覚させる甘味の上昇度合いについては両手法で大きな差は確認されなかったが,上昇手法はパルス手法に比べ,違和感が少なく自然に受け入れられるという傾向が確認された. また,ゼリーに層構造を設けることで,甘味の濃さの分布を食物内に設計する手法の試作を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度更新した計画通り,実装した飲料の糖度調整デバイスを用いた実験を行い,全体で含まれる糖分量が同量あっても,甘みに対する印象や飲食に対する満足感がより高くなる最適な濃度変化を割り出した.また,ゼリーに層構造を設けることで,甘味の濃さの分布を食物内に設計する手法の試作を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度の研究結果を論文としてまとめ対外発表するとともに,今年度構築した甘味の濃さの分布を食物内に設計する手法を用いて,固形食物における食事の進行状況に応じた味変化が甘味知覚に与える影響を明らかにする.
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Causes of Carryover |
当初の計画では2022年度後半に固形食物における食事の進行状況に応じた味変化設計手法の構築を行う予定であった.しかし,その前段階である飲料摂取の進行状況に応じた糖分濃度変化が味印象に与える影響の検証を進めていく中で,実験デバイスの見直し・再設計が必要となり,実験計画に遅れが生じたため,固形食物に対する実験まで至らなかった.その結果,計画を1年後ろ倒しにする必要が生じた.今年度で飲料の摂取の進行状況に応じた糖分濃度変化が味印象に与える影響の検証が完了したため,次年度使用額については成果を国際学会で発表するための諸経費と,固形食物における食事の進行状況に応じた味変化設計手法の検証実験に充てる予定である.
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