2022 Fiscal Year Research-status Report
闘争行動への介入によるコオロギの群れのソーシャルディスタンス形成メカニズム解明
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22K19795
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 靖博 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70402972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青沼 仁志 神戸大学, 理学研究科, 教授 (20333643)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 闘争行動 / コオロギ / 小型ロボット / ソーシャルディスタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
コオロギを含む昆虫が見せる闘争行動に着目し,コオロギが個体間の局所的な相互作用を通じて,自律的な個体の行動がどのように集団全体の振る舞いに秩序を創発するか,または,どのようにソーシャルディスタンスを適切に保つ安定な状態を生成しているのかを明らかにすることを目的とした本研究の目的の達成に向けて,2022年度では,「一台のロボットでの闘争行動の介入」,「電気刺激による闘争性の変化の解析」を実施するとともに,「コオロギの神経生理学実験(筋活動の計測)や及び脳内物質の計測」に着手した.ロボットでの闘争行動介入については,小型移動ロボットによる闘争行動介入用の実験システムを構築した.構築したシステムは,市販の小型ロボットtoioとUnityを用いることで,システム構築にかかる時間を抑制した.またこのシステムは複数台のロボットの実験を行ったり,実際のロボットを用いた実験と計算機上のシミュレーションをシームレスに切り替えて実行できるようなシステムとなっている.そして,構築したロボットシステムを用いて闘争行動への介入実験を行った.その結果,小型ロボットにて,闘争行動に介入できることを確認した.特に,まずコオロギ同士に闘争を行わせ勝負をつけさせた上で,ロボットと負けたコオロギを闘争させることで,その負けたコオロギの行動を変容させることが可能となった.
また,コオロギの闘争では,勝敗が着くと勝ち個体は攻撃性を維持し,敗者は長時間攻撃性を減衰する. この攻撃性の減衰は,負け効果と呼ばれる.この負け効果から回復するメカニズムについて調べたところ,負け効果からの回復には,他個体との接触刺激のほか,視覚刺激が重要な鍵を握ることが示唆される結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画での実施スケジュール案では,2022年度は,「一台のロボットでの闘争行動の介入」,「電気刺激による闘争性の変化の解析」を実施するとともに,「コオロギの神経生理学実験(筋活動の計測)や及び脳内物質の計測」に着手することが主な実施内容であった.研究実績で述べたように,「一台のロボットでの闘争行動の介入」と「コオロギの神経生理学実験(筋活動の計測)や及び脳内物質の計測」については順調に研究を進められていると考えられる.特に,「ロボットでの闘争行動の介入」については,介入のための小型ロボットの準備や実験システムの開発を完了させ,実際に介入実験を行い,成果も上げ始めている.ロボットも1台だけでは無く複数台動作可能なシステムとしてるため,複数台を用いた実験にもスムーズに移行できる.したがって,スケジュールより早く進んでいると考えている.一方,電気刺激による闘争行動への介入実験については,刺激装置の準備までは行ったものの,明確な大きな成果を出すまでには至っていない.よって,総合的には,「おおむね順調に進展している」という自己評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の実施内容は「おおむね順調に進展している」と考えられるため,2023年度は研究計画での実施スケジュール案どおり,「複数台のロボットによる闘争行動への介入実験」および「電気刺激による闘争行動への介入実験」を継続して実施していく.特に,少し遅れている電気刺激に関する実験に注力して推進していき,最後のサブテーマとなる,「コオロギの群れのモデル化」及び「群れモデルの安静解析」にできるだけ早く着手する.そして,それまでに得られた結果を総合し考察していくことで,本研究の目的である,「コオロギの群れのてソーシャルディスタンス生成メカニズム解明」の達成を目指す.またこれまでの研究成果について,国内,国際の学会にて,発表できるよう準備していく.また,それと平行して,2023年度末には結果をまとめて論文誌に投稿できるような準備も進めていく.
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Causes of Carryover |
本研究は概ね順調に推進しているが,年度途中スタートとなったこともあり,サブテーマの一つである「電気刺激による闘争行動への介入実験」が少し遅れている.その結果,そのサブテーマで使用する予定だった分が,未使用額として繰り越しされることとなった.よって,未使用額はこのサブテーマ遂行に必要な実験消耗品の購入等に充てる.
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Research Products
(4 results)