2023 Fiscal Year Research-status Report
形状自在な水素吸蔵合金ペーパーを用いたソフトアクチュエータの探索融合研究
Project/Area Number |
22K19812
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井野 秀一 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70250511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 幸輝 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (10409667)
細野 美奈子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (70647974)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 水素吸蔵合金 / ソフトアクチュエータ / ヒューマンインタフェース / QOLテクノロジー / 異分野融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低圧でコンパクトに水素を貯蔵できる水素吸蔵合金と紙づくりの技術を融合的に活用して、QOL(Quality of Life)テクノロジーに資する形状自在・軽量ソフトアクチュエータ(薄型・高出力モーションデバイス)の研究開発に取り組んでいる。本年度は、昨年度に引き続き、ソフトアクチュエータの駆動力生成の基幹である水素吸蔵合金のシート化技術の開発、福祉・ヘルスケア分野への応用に向けたヒューマンインタフェースの基礎研究として、点字ディスプレイや立ち上がり動作をサポートするアクチュエータの設計基準を得るための人間計測実験を行った。水素吸蔵合金のシート化では、紙の主原料であるパルプ材と合金粉末にカーボンファイバーを添加した水素吸蔵合金ペーパーを製作し、評価実験を行った。その結果、合金ペーパーは、合金粉末の状態に比べて加熱・冷却に対する圧力生成の応答性が高まり、シート化による形状の自在性に加えてアクチュエータの駆動性にも好影響を与えることがわかった。また、福祉・ヘルスケア分野への展開のための人間計測実験では、点字の触読性を定量評価するコンパクトな手指動作計測システムを開発し、点字ディスプレイ向けの小型アクチュエータに求められる条件などを調べ、指先での凹凸の探索動作に伴う知覚特性に関する評価も行った。さらに、高齢者のトイレでの立ち上がり動作を支援する簡便な便座傾斜システムとエアバッグ型アクチュエータの開発に向けた基礎実験を行った。その結果、便座の傾斜角度の増加とともに、下肢筋等における生理的な負担軽減と心理的な立ち上がりやすさが向上することがわかり、傾斜システムの人間工学的な有用性が示唆された。その他では、水素吸蔵合金ペーパーを用いた小型圧力生成デバイスの試作や素材探索などを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、ソフトアクチュエータの新技術開発の土台となる水素吸蔵合金とその関連の基盤技術の開発に取り組んだ。具体的には、製紙技術を活用した水素吸蔵合金ペーパーの設計と実験サンプルの製作、水素吸蔵合金ペーパーを用いた小型圧力生成デバイスの開発と圧力応答性などの評価実験を行った。さらに、合金ペーパーを用いたソフトアクチュエータの福祉分野での応用展開に向けた人間計測実験を感覚代行システム(点字ディスプレイ)や介護支援・リハ機器(便座傾斜システム)などを対象に進めた。以上より、水素吸蔵合金アクチュエータの基盤技術の研究推進に加えて、応用技術(福祉系)に関連した人間計測の研究フェーズにも着実に進んだことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
水素吸蔵合金を用いたソフトアクチュエータの新技術開発をコアとなる要素技術研究(水素吸蔵合金ペーパーの試作開発と機能評価、シート化に適したパルプ材と合金粉末などの混合レシピの選択、フレキシブル素材の探索など)の組み合わせにより深化させる。また、「福祉・医療」×「ものづくり」の異分野融合での展開(機器デザイン)に向けた水素吸蔵合金アクチュエータの人間計測研究を同時に推進する。そして、形状自在・軽量の新奇なソフトアクチュエータのプロトタイプ開発を進め、水素吸蔵合金のQOLテクノロジー分野への橋渡しの端緒をつかむ。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、研究分担者や研究協力者らとの研究打ち合わせに要する旅費がオンライン会議の活用により少なく抑えられたこと、福祉分野への応用に向けたデバイス開発の基礎データを得る人間計測実験を前倒しで進めたことによりプロトタイプ開発に伴う物品費が減じたことが挙げられる。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画としては、水素吸蔵合金ペーパーの機能評価、合金ペーパーを用いたソフトアクチュエータの開発、ソフトアクチュエータを応用した福祉機器デザインのための人間計測実験で必要となる物品費、研究打ち合わせや学会などでの成果発表に伴う旅費等の経費に充てる予定である。
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