2023 Fiscal Year Research-status Report
ハイパースペクトルカメラと偏光カメラの融合による植生光合成速度推定法の開発
Project/Area Number |
22K19841
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
彦坂 幸毅 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (10272006)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
Keywords | リモートセンシング / 光散乱 / 光化学反射指数 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学反射指数(PRI)は、葉の光合成系の状態を反映する反射指数であり、リモートセンシングにおいて光合成速度の推定に利用することが期待されている。しかし、PRIは光合成系以外の要因にも影響を受けるため、精度は低く、発見から30年以上経った現在でも実用化はされていない。研究代表者は、PRIを用いた光合成推定において、反射光スペクトルに強い角度依存性があり、これがPRIの精度を下げる原因の一つであることに気づき、本研究を着想した。 本年度は光源角度と観測角度を変えてPRIの値がどのように変化するかを調べた。当初は、散乱光成分(ランベルト反射)と鏡面反射の二成分に分けることでPRIの角度依存性を補正できると考えたが、調べた結果、観測角度に依存する第3の成分があることがわかった。この成分は観測角度と指数関数の関係にあり、この成分を導入することで反射光の角度依存性を波長ごとに数式で表せることがわかった。ランベルト反射成分は光合成系の情報を含み、この成分のみを抽出することで光合成系の状態を角度非依存的に推定できることが明らかとなった。 さらに、この手法をハイパースペクトルカメラ観測からの推定に用いることを目指し、実験を行った。残念ながらハイパースペクトルカメラで観測した光の角度依存性は分光光度計で観測したときの角度依存性とは若干異なり、最初のトライアルは失敗した。この原因と克服するための手法を検討した。 このほか、PRIの精度を下げる原因の一つである葉の色素組成について、これを補正する方法を考案し、論文を発表した(Nakamura et al. 2024)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験は予定通り行われた。反射光の角度依存性を数理モデル化することに成功した。予想外の結果がいくつか出ているが、反射光の角度依存性に3つめの成分があることは、ある程度想定していたことであり、新たな数式を導入することによって克服できている。ハイパースペクトルの観測結果と分光光度計の観測結果の不一致も予想外であり、これはまだ克服できていないが、技術的な問題であると考えられ、今後克服できると期待している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ハイパースペクトルカメラで観測した光の波長依存性を説明するモデルを構築する。モデルそのものに問題があるのではなく、観測システムに問題があると考えており、観測機器の改良によって解決することを考えている。モデルの完成後に、偏光カメラ(葉の角度を計測する)とハイパースペクトルカメラの同時測定を行い、葉角度のばらつきを考慮した群落光合成速度推定法を確立する。
|
Causes of Carryover |
ハイパースペクトルカメラの観測結果と分光光度計の観測結果が一致せず、次に予定していた偏光カメラを利用した実験を止め、これまでのシステムの検討を行ったため。次年度速やかに行う予定である。
|