2023 Fiscal Year Research-status Report
DNA修復細胞集団の再構成に伴う低線量放射線リスクの上振れ
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22K19847
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小松 賢志 京都大学, 生命科学研究科, 研究員 (80124577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田内 広 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (70216597)
井原 誠 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (60175213)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 相同組換え修復 / 非相同末端再結合 / 放射線突然変異 / BLQモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線照射した細胞の生存率とそこから発生する突然変異は放射線損傷のDNA修復能力に大きく依存する。放射線DNA修復として、誤りの多い非相同末端再結合と誤りの少ない相同組換え修復の2種類が知られているが、非相同末端再結合は突然変異や染色体異常を誘発するので放射線による発がんや遺伝的影響の原因とみなされる。本研究では、低線量域で放射線DNA修復の主役が非相同末端再結合から相同組換え修復に替る我々のシミュレーション結果を初めに実証、そして発がんや遺伝的影響の直接の原因とみなされる放射線突然変異を実測して、放射線リスクがLNT仮説の予想より上振れする可能性について検証することを目的とする。 放射線突然変異は我々が開発した高感度検出系を用いて行う。初年度はDNA修復経路の有無による突然変異頻度測定のために、今年度はコンフルエント法により、高感度の遺伝子突然変異検出系の細胞のG1期およびS期への同調法の確立を行った。その結果、G1期では84%の同調細胞が得られ、またS期では通常のS期細胞を約3倍に濃縮できた。続いて、これら同調細胞を用いて突然変異の線量依存性を測定した。その結果、0.2Gy-1Gyの範囲でG1期細胞の突然変異率が有意に高くなった。しかし、2Gy照射で発生したG1期細胞の突然変異頻度はS期細胞とほぼ同じであった。これは我々のシミュレーションから予想された低線量での突然変異の上振れを支持する結果である。また、これらの突然変異の中で放射線由来の突然変異を分自然突然変異から子生物学的に分離するために実験開始した。並行して、G1期細胞100%およびS期細胞100%の突然変異を推定する解析法の開発も進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験前に予想したことであるが、G1期の細胞にも一定数のS期細胞が含まれており、細胞同調の精度には限度があると判断した。そこで我々が提唱したBLQモデルから純粋なG1期並びにS期の突然変異を推定する解析法の開発を並行して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
G1期に高頻度で怒る突然変異頻度が観測されたので、引き続き統計的に有意になるまで実験を繰り返して定量的に確認する。同時に、細胞周期依存性を補足するためにBLQモデルの開発を行う。BLQモデルは細胞生存率の形状から細胞周期依存性を推定する画期的な方法であるので、その実用性を確認する。
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Causes of Carryover |
論文Mechanistic insights into the survival curve of HeLa cells with a short shoulder and their S phase-specific sensitivityのJournal of Radiation Research誌での掲載費(APC料金)を予定していたが、免除されたので支出額が少なくて済んだ。次年度は最終年度になるので研究成果の総仕上げとしての論文発表にこの経費を回す予定である。
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