2022 Fiscal Year Research-status Report
Experimental study on the evaporation of water from airborne droplets containing inorganic salts and proteins
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22K19849
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
竹川 暢之 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00324369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 健次郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50540407)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | COVID-19 / エアロゾル / 飛沫 / 飛沫核 / 水分蒸発 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の伝播において、相対湿度変化に伴う呼吸器飛沫の水分蒸発過程が重要である。本研究では、インクジェット粒子発生器 (IAG) とフローチューブを用いた飛沫模擬粒子の実験を行い、飛沫の水分蒸発速度の支配要因を解明することを目的とする。 呼吸器飛沫は、無機イオン、糖蛋白質、界面活性剤として作用する両親媒性物質などを含む。本研究では、水分蒸発過程で鍵となる成分を含んだ飛沫模擬粒子を実験室で生成する。飛沫模擬粒子の構成物質として、NaCl (無機塩)、ブタ胃由来ムチン (糖蛋白質)、ジパルミトイルホスファチジルコリン (DPPC; 界面活性剤) を用いた。 都立大において、フローチューブ内の湿度を制御する機構を開発し、光学式粒子カウンタを用いて多分散粒子に対する水分蒸発実験を行った。粒子生成は、溶液A (NaClのみ)、溶液B (NaCl+ムチン)、溶液C (NaCl+ムチン+DPPC) について行った。その結果、ムチンとDPPCの存在によって水分蒸発速度に変化が生じることが定性的に明らかになった。 これらの溶液を用いて、産総研においてIAGによる粒子生成を試験的に行った。本実験の粒子検出には直挿式レーザー散乱粒子カウンタを用いる予定であるが、粒子生成条件の検討段階では操作が簡便な空気力学径測定装置 (APS) を用いた。IAGは粗大粒子を一定の粒径・頻度で定量的に発生させることが可能であるが、溶液BやCのように粘性の大きい溶液では粒子生成が一部不規則になることが分かった。ただし、溶液を過剰に希釈すると現実の呼吸器飛沫との乖離が大きくなる。このため、溶液BとCの希釈条件を詳細に検討し、安定的に粒子生成が可能となる最小の希釈率を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、都立大において試料溶液およびフローチューブ湿度条件の最適化を行い、産総研においてIAG、光学アクセス付液滴蒸発管、直挿式レーザー散乱粒子カウンタの準備を行う計画となっていた。これまでに溶液の調整とフローチューブ湿度制御機構の開発、およびIAGを用いた粒子生成試験を行っており、初年度に必要な研究内容を概ね実施することができた。都立大では、粒子生成の再現性検証と溶液の最適化が一部未完了となっている。産総研では、光学アクセス付液滴蒸発管内部の光反射の低減が必要であることが分かったため、現在改良を行っている。これらは次年度早期に解決可能と見込まれるため、研究全体の進捗に大きな影響はないと考えられる。以上より、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
IAGによる粒子生成の再現性を検証した上で、飛沫模擬粒子の水分蒸発実験を行うための溶液の最適条件を決定する。また、IAG、光学アクセス付液滴蒸発管、直挿式レーザー散乱粒子カウンタを組み込んだフローチューブを完成させて実験を行う。実験で得られた成分別・相対湿度別の蒸発速度を、ガス-粒子間の物質移動方程式を用いて解釈する。ムチンおよびDPPCの効果については、平衡蒸気圧の曲率効果や溶質効果の項などをパラメータとして再現を試みる。これらの結果を踏まえて、ウイルス学・感染症学分野も含めた学際的な研究領域への発展の可能性について議論する。
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Causes of Carryover |
都立大で実施する粒子生成の再現性検証等の実験がやや後ろ倒しになったため、物品費、旅費、謝金の一部も次年度に執行することとした。また、産総研において本研究専用にIAGのインクジェットコントローラを購入する計画となっていたが、メーカーによる当該物品の製造が遅れる見込みであったため、次年度に発注・購入することとした。当該年度は産総研の現有装置を用いて実験したため、研究全体として大きな遅れは生じていない。必要経費は次年度のできるだけ早期に執行する予定である。
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