2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel histotripsy method by continuous generation of cloud cavitation
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22K19889
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉澤 晋 東北大学, 工学研究科, 教授 (30455802)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | キャビテーション / 強力集束超音波 / Histotripsy |
Outline of Annual Research Achievements |
非侵襲ながん治療法として最近注目されているものに,強力集束超音波(HIFU)のパルス波を用いた組織破砕治療があり,Histotripsyと呼ばれている.2023年には肝腫瘍治療用の機器の販売がFDAから承認された.この手法は単なる組織破砕効果だけでなく,最近では免疫賦活効果も注目されている.Histotripsyでは,非常に強力なHIFUパルス波を集束させ,HIFU焦点において減圧沸騰現象による気泡群(クラウドキャビテーション)が発生させ,この気泡群の崩壊によるエロージョンを繰り返すことで周囲組織を破砕する.そこで本研究では,低いエネルギーと高いスループットを両立する新治療法の開発を目的とし,2023年度は,2022年度に開発した4点の焦点に連続的にクラウドキャビテーションを発生させるHIFU照射方法を用いて,組織破砕効率ついて実験的に検討を行った. HIFU照射方法としては,最初の焦点でクラウドキャビテーションを発生させた直後に1 mm手前側(HIFUトランスデューサ側)に焦点をシフトし,キャビテーション気泡群を手前側に1 mm分成長させた.1 mmの焦点シフトを続けて2回行い,4つの焦点にまたがってキャビテーション気泡群を生成した.このHIFU照射シーケンスを用いて鳥肝臓に対して繰り返しHIFU照射を行い,組織の破砕実験を実施した.組織の破砕量は超音波イメージングの輝度減少量として評価した.その結果,焦点の電子走査によるキャビテーション気泡群の連続的生成は,鳥肝臓の組織破砕速度向上に有効であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は,生体組織に対するHIFU照射実験を行い,2022年度に開発したHIFU照射方法を用いて,キャビテーション気泡群の連続的生成による生体組織破砕速度向上効果について実験的に検討を行った.鳥の筋肉組織と肝臓を照射対象として,様々なパラメータで実験を実施した結果と他の研究・開発結果を参照し,最終的に鳥肝臓組織を照射対象とすることと決めた.最初は,商用の超音波診断装置を用いて超音波画像の輝度減少量について評価したが,輝度減少量の定量性の観点から,開発用の超音波送受信プラットフォーム(Verasonics,Vantage 256)を用いて得られた超音波輝度信号について解析することとした.結果として,鳥肝臓を対象としたときの,キャビテーション気泡群の連続生成による破砕速度向上を示すことができ,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2024年度は,様々なHIFUシーケンスを用いたHIFU照射実験を実施し,低いエネルギーと高いスループットを両立する,より効率の良い新治療法を開発する.なお,対象組織を鳥肝臓としたため,十分な組織厚さを確保した条件で組織中のキャビテーション気泡を光学的に観察する方法は困難であり,組織内のキャビテーション気泡イメージング手法としては超音波イメージングを用いる.組織破砕量も超音波イメージングで評価するため,HIFUパルス照射中の気泡イメージングと,組織イメージングを適切な組み合わせて実施し,気泡領域と組織破砕領域の関係性について調べる.また,HIFUパルス照射後に溶解まで時間のかかる残存気泡が次のHIFUパルスを散乱し,効率低下につながることがわかっている.そのため,残存気泡の影響を低減するか,可能であれば残存気泡を活用できるHIFU照射方法も検討することで,さらなる破砕速度の向上を目指す.
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Causes of Carryover |
2023年度は,キャビテーション気泡の連続的生成による組織破砕の結果そのもののみならず,そのモニタリングに必要な気泡の超音波イメージング,HIFU照射シーケンスの開発に必要なHIFU照射シーケンスと気泡領域の関係についてなど,いくつかの成果が学会発表できるようになり,成果発表関連費用が想定よりも増加した.そのため,計画していたハイドロフォンの購入を延期し,昨年度に引き続き精度については劣るが計測可能な使用年数の長いハイドロフォンを用いて代替するなどし,2024年度分と合わせてハイドロフォン購入をすることにした.そのため,2023年度では残額が生じたが,最終年度までで予定通りの使用額となる予定である.
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