2023 Fiscal Year Annual Research Report
COVID-19による味覚障害を治療するための近赤外光ナノ粒子デバイスの開発
Project/Area Number |
22K19902
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
上村 真生 東京理科大学, 先進工学部機能デザイン工学科, 准教授 (80706888)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 近赤外光 / フォトサーマル効果 / TRPチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体に非侵襲な近赤外光に応答して発熱(フォトサーマル効果)するナノ粒子を開発し、味覚にも関連する細胞膜上の温度感受性イオンチャネルを活性化することで、COVID-19による味覚障害を回復させる治療法に向けた基礎的知見を得ることを取り組んだ。フォトサーマル効果を示す色素であるインドシアニングリーン (ICG) を含むポリマーミセル (ICGミセル) は、優れた生体適合性と生分解性を示した。さらに、組織透過性に優れた近赤外 (NIR) 光照射下で、ICGミセルは優れたフォトサーマル効果を示した。また、最終年度では、抗TRPV1抗体を導入したICGミセルを、細胞膜上に存在する代表的な温度感受性イオンチャネルであるTRPV1に対して選択的に結合させ、NIR照射下において神経細胞へのナトリウムイオン流入の促進と膜電位の上昇を観察することができた。これらの結果から、本研究で開発したICGミセルは、神経細胞を非侵襲かつ遠隔的に活性化することができることがわかった。ヒトは味覚を感知する味細胞の膜上に存在するTRPM5チャネルからナトリウムイオンが細胞内に流入することで味細胞が活性化して味覚を得るが、COVID-19感染者はこのTRPM5の活性が失われていることが最新の研究で明らかとなっている。そのため、本研究で得られた知見を味細胞のTRPM5チャネルの活性化に適用することで、味覚を再活性化できる技術につながると期待できる。
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