2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K19905
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
神戸 裕介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (30747671)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 低分子量 / βシート構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、移植されたハイドロゲルの生分解挙動を決定する生体・材料側の主要因子を解明し、その結果として、移植材料のin vivo(生体内)での生分解性に関する知識の獲得や、生分解性の自在制御が可能な移植材料の創出に貢献することである。本年度は、カイコが産生するシルクフィブロインタンパク質から成るハイドロゲル(以下、シルクゲル)をモデル材料とし、実験動物に移植されたシルクゲルの生分解挙動を決定する材料側因子の解明に取り組んだ。 先行研究により、in vitro(生体外)での酵素によるシルクゲルの分解時間とシルクゲルのβシート含有量とが正に相関することが示されていた。そこで、βシート含有量を調節するため、シルクの分子量を変化させた。アルカリ処理によって低分子量化したシルクからゲル(低分子量シルクゲル)を作製し、アルカリ処理を施さない、通常の分子量のシルクから成るゲル(高分子量シルクゲル)と、物性の比較を行った。その結果、凍結乾燥したシルクゲルのマイクロ構造には大きな違いは認められれなかったものの、低分子量シルクゲルの方が、βシート含有量が少なく、また、結晶性の指標となる熱分解温度も低かった。両シルクゲルをタンパク質分解酵素溶液に浸漬し、重量変化を評価した結果、低分子量シルクゲルの方が、約3倍早い重量減少を示した。また、ラット背部皮下移植の結果、低分子量シルクゲルの方が約2倍早く分解した。そして、in vivoでの生分解性には、昨年度明らかにした通り、マクロファージなどの炎症細胞が関与していた。以上より、シルクゲルのin vivoでの生分解挙動を決定する主な材料側因子としてβシート含有量が挙げられ、これを調製するためにはシルクの分子量を変化させれば良いことが分かった。
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