2023 Fiscal Year Annual Research Report
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22K19930
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺川 貴樹 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (10250854)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 粒子線治療 / 重陽子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,重水素を含む薬剤を癌細胞に集積させた状態で重陽子線を照射し,入射重陽子と薬剤中の重陽子が核融合反応(以下,DD反応)を起こすことにより,癌細胞に選択的に高い治療効果を誘発する新規の重陽子線治療法を開発することである.令和5年度ではその治療効果を細胞レベルで検証するために,東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)において重陽子線の細胞照射実験を計画した.今年度前半では,昨年度までに開発したエネルギー変調フィルタや放射線感受性ゲル線量計,光CT読出し装置等を統合・システム化し,重陽子線照射により照射野,深部線量分布,線量校正について総合評価し,細胞照射実験に適した実験条件および精度が達成されていることを確認した.一方,サイクロトロン加速器が本研究の実験期間中に故障しビーム供給が長期(結果的に約1年)に渡って不可能となり,本研究を含めてCYRICの全ての実験がキャンセルされる状況となった,よって研究継続のためにDD反応に対するさらに高精度なモンテカルロシミュレーションを実施し,従来の治療法である陽子線や重陽子線の単独治療に対する,本研究のDD反応を誘起する重陽子線治療法の優位性の評価を試みた.そのためにDD反応の断面積が極大となる低エネルギー領域での最新の実験データに基づくライブラリーを採用し,通常のシミュレーションよりも信頼性の高い結果が得れるように,Phitsシミュレーションコードを本研究目的に特化・改良した.その結果,比較対照条件に比べてDD反応を伴う重陽子線照射において,組織および細胞レベルの空間スケールで線量及びLET双方の有意な増加が確認された.また旧ライブラリーによる予測と比較しても線量,LETともに増加する結果となり,本研究の治療法の優位性を指示する有望な結果が得られた.
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Research Products
(3 results)