2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the emergence mechanism of heterogeneity by glioma stem cells for a breakthrough cancer treatment strategy
Project/Area Number |
22K19943
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (20407141)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 不均一性 / グリオーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
グリオーマは悪性度の高い脳腫瘍の一種で新たな治療戦略の開発が求められている。マイクロ流体デバイスを用いてグリオーマ幹細胞の三次元浸潤アッセイを行うと、培養初期には幹細胞マーカーを発現する均一な細胞集団が観察されるが、ゲル内部に浸潤した細胞集団では、分化マーカーを発現する細胞が混在した不均一な細胞集団が形成される。グリオーマの新たな治療法を開発するためには、この不均一性の出現メカニズムを解明する必要がある。我々の最近の研究で、細胞密度の高い浸潤後方において分化細胞が出現することに着目し、細胞分泌因子が局所に蓄積し、不均一性の出現に関与することを突き止めた。そこで、本研究では、この発見を足掛かりにして、不均一性を出現させる細胞分泌因子を特定し、グリオーマ幹細胞の不均一性出現メカニズムを解明することを目的とした。本年度はまず、高密度および低密度で培養したグリオーマ幹細胞のマイクロアレイ解析を行い、グリオーマ幹細胞の発現変化について網羅的に調べた。その結果、高密度で培養したグリオーマ幹細胞では、グリア新生を含む中枢神経系の分化に関連する遺伝子発現が促進されていた。一方、低密度で培養したグリオーマ幹細胞では、クロマチン構造の制御や細胞サイクルに関連する遺伝子発現が促進されていた。そこで、細胞増殖を阻害することが知られているIL-1β、TNF-α、TGF-β1などの因子がグリオーマ幹細胞の分化を誘導するのではないかと考え、グリオーマ幹細胞の分化に与える影響を調べたところ、TGF-β1がグリオーマ幹細胞の分化を誘導することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3つのステップに分けて研究を遂行し、最終的にグリオーマ幹細胞が浸潤する際に不均一性が出現するメカニズムに関与する重要な細胞分泌因子を特定することを目指す。まず、ステップ1では、培養デバイスの作製と細胞培養を行い、グリオーマ幹細胞の三次元浸潤モデルを構築する。次に、ステップ2として、不均一性を出現させる因子の特定に取り組む。最後に、ステップ3として、マイクロ流体デバイスを用いて不均一性出現メカニズムを検証する。まず、ステップ1として、マイクロ流体デバイスを用いたグリオーマ幹細胞の三次元浸潤モデルを構築し、浸潤先端部のグリオーマ幹細胞は幹細胞性を維持している一方で、浸潤根本部の細胞は分化した細胞が分布する不均一性を有することを確認した。次に、ステップ2として、高密度および低密度で培養したグリオーマ幹細胞のマイクロアレイ解析を行い、グリオーマ幹細胞の発現変化について網羅的に調べた結果、不均一性を誘導する候補として3つの因子(IL-1β、TNF-α、TGF-β1)をリストアップした。さらに、これらの因子がグリオーマ幹細胞の分化に与える影響を調べたところ、TGF-β1がグリオーマ幹細胞の分化を誘導することを見出した。また、TGF-β受容体阻害剤を添加すると、浸潤根本部で分化する細胞が消失し、不均一性が失われた。すなわち、グリオーマ幹細胞による不均一性出現メカニズムにはTGF-β受容体を介したシグナル伝達が重要であることがわかった。以上のように現在のところステップ2までの研究計画が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究に引き続き、ステップ2の研究として不均一性を出現させる因子の特定に取り組む。すなわち、グリオーマ幹細胞による不均一性出現メカニズムにはTGF-β受容体を介したシグナル伝達が重要であることまでは明らかになっているため、TGF-β受容体のリガンドとしてグリオーマ幹細胞が何を分泌しているのかという点について調べる。TGF-β受容体阻害剤として用いたSB431542には、TGF-β受容体であるALK4、ALK5、ALK7を阻害する効果がある。したがって、これら3つの受容体のうち、どれがグリオーマ幹細胞の分化に重要な役割を果たしているかという点について調べていく。そのためには、siRNAなどの技術を用いてグリオーマ幹細胞におけるALK4、ALK5、ALK7の発現を個別に阻害し、グリオーマ幹細胞の分化に与える影響を調べる必要がある。また、グリオーマ幹細胞の分化に重要な役割を果たしているTGF-β受容体を特定したら、次の段階として、そのリガンドとなる候補を調べ、グリオーマ幹細胞が分泌している因子を特定する。最後に、ステップ3として、マイクロ流体デバイスを用いて不均一性出現メカニズムを検証する。
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Causes of Carryover |
1年目の学会発表のために計上していた旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。2年目にまとまった研究成果として国際会議で発表する予定である。また、本研究では、2年目の研究計画において、siRNAなどの技術を用いてグリオーマ幹細胞におけるTGF-β受容体であるALK4、ALK5、ALK7の発現を個別に阻害し、グリオーマ幹細胞の分化に与える影響を調べる必要がある。また、グリオーマ幹細胞の分化に重要な役割を果たしているTGF-β受容体を特定したら、次の段階として、そのリガンドとなる候補を調べ、グリオーマ幹細胞が分泌している因子を特定する。グリオーマ幹細胞が分泌している因子として複数の候補が挙げられる可能性があり、これらの影響を1つずつ調べていくためには1年目よりも多くのコストを有する。また、ステップ3として、マイクロ流体デバイスを用いて不均一性出現メカニズムを検証するためには、中和抗体などを培養液に添加する実験が必要となる。以上の理由から2年目の研究により多くの研究費を支出する計画である。
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