2023 Fiscal Year Annual Research Report
中世ヨーロッパにおけるパネル型聖遺物容器の歴史的展開についての包括的研究
Project/Area Number |
22K19951
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 泉フロランス 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (50951399)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 美術史 / キリスト教美術 / 西洋中世工芸史 / 聖遺物容器 / 比較美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度の作業を継続しながら、更なる関連文献資料の博捜、読解を行い、昨年度に収集した一次史料の読解に上半期を充てた。昨年度作成した、14世紀までに西欧で制作されたパネル型聖遺物容器の作品リストは、東西の影響関係に関して系統立てた分類がなされた状態まで至っていなかったため、用途・機能、サイズ、素材、制作された時期、地域、様式、註文主の社会的ステータスなどの情報を各作品のリストに追加しながら、ビザンティンで制作された同タイプのスタウロテクと比較対照した際に想定される影響関係について、ある程度のグラデーションを顧慮しつつ、分類を進めていった。また、巡礼地、巡礼教会に安置されていた聖遺物容器についての文献調査も並行して行なった。J. Braun(1940)を定本としながら、これまで取り上げられてこなかった作品を、特に見過ごされてきた制作地について目配りを行いながら充実させていった。 夏期と冬期の休暇中には、欧州で作品実見調査および文献資料調査を行なった。夏期の出張では、フィレンツェ大学において開催されたシンポジウムにおいて、巡礼地で制作されてきた造形作品に着目し、それらを比較宗教美術史的観点から分析した研究発表を行なった。この成果は、フィレンツェ大学出版会から論文集掲載の一論文として刊行予定である。 昨年度に行なったフィレンツェ国立修復研究所の修復士らとのディスカッション、下半期に行なった文献の博捜・分析により、特に作品の素材および用いられた技法についての研究が深化した。この問題については今後の課題とする部分も大きいが、2024年3月までの成果は、雑誌論文として刊行が決定している。
|