2023 Fiscal Year Annual Research Report
合理的なフィクションとしての道徳と道徳的介入の限界
Project/Area Number |
22K19958
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
野上 志学 三重大学, 人文学部, 講師 (40963393)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | メタ倫理学 / 表出主義 / 錯誤説 / 懐疑論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,メタ倫理学における錯誤説や道徳懐疑論を前提として,合理的なフィクションとしての道徳の可能性を探究するものである.今年度は,フィクションとして道徳を導入する際に,革命的表出主義(revolutionary expressivism)と呼ばれる見解に依拠することの是非について検討した.革命的表出主義によれば,我々は道徳語の使用を,メタ倫理学的表出主義に沿うかたちで変更することを主張するものである.だが,そもそも革命的表出主義が可能であるには,表出主義が可能でなければならない.表出主義には,道徳的ないし規範的性質への存在論的コミットメントの回避や,動機付け内在主義の説明可能性といった,メタ倫理学説上のさまざまな利点があるとはいえ,Frege=Geach問題(Geach (1965))というきわめて深刻な論理的問題が指摘されてきた.この問題は,多くの論者が解決を試みてきたが,未だ成功をみていない.本年度の研究においては,この問題に対して新しいアプローチを試みている.それはAllan Gibbard (1990), (2003)におけるGibbardの意味論を一般化するというアプローチである.結果的にそれが,直観主義論理の意味論として当初考案されたBethモデルを転用し,形式化できることを見出した.さらに,Ian Rumfitt (2007)における反証主義のアイデアを組み込むことによって,結果する論理が,直観主義論理ではなく古典論理になる可能性についても探究している.これは基本的には,Glivenkoの定理を,Bethモデルの内部で解釈することによって得られる.なお,以上の経過については,日本科学哲学会第56回(2023年度)大会(於・筑波大学)において「B タイプ不整合を用いる表出主義意味論再考」として報告された.
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