2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K19962
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
織田 和明 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 特任研究員 (30963813)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 日本哲学 / 西田幾多郎 / 田辺元 / 九鬼周造 / 岩下壮一 / 中井正一 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は西田幾多郎、田辺元、九鬼周造、中井正一の4人に注目し、戦前の日本思想の頂点にして戦後の実践の起点となる1935年前後の日本哲学の思想の文脈を明らかにすることを目的とする。本年度はまず田辺元の後期の哲学における空虚さを論じ、「共生」概念へと結びつけることでその現代的な展開を検討た「田辺元の倒し方―絶対転換としての絶対無の空虚さをめぐって」を廖欽彬・河合一樹編『危機の時代と田辺哲学―田辺元没後60周年記念論集―』(法政大学出版局、2022年)に寄稿・出版した。次に九鬼周造と中井正一の関係を両者の「いき」についての議論に注目しながら比較検討し、現代社会におけるそれぞれの思想の意義と可能性を検討した論文「平行線と脱走:九鬼周造と中井正一の隔たりについての思想」を社会芸術学会の機関誌『社藝堂』に投稿した(採択済み、第10号、印刷中)。そして九鬼周造と彼の親友でカトリック司祭・哲学者・社会事業家である岩下壮一の関係を検討する研究発表を大谷大学2022年度ガクモン講座「愛とはどんなものだろう?」にて行い、その報告「本当の愛に背を向けても──哲学者九鬼周造の幸福」を『響流:大谷大学任期制助教教育研究報告書』(第10号、2023年)に寄稿した。また3月に開催された檜垣立哉教授大阪大学最終年度記念シンポジウムでは西田幾多郎、田辺元、九鬼周造の哲学を参照しながら現代日本の哲学者である檜垣立哉の哲学を論じる研究発表「神様のいない3月3日、あるいは楽しめない偶然に埋もれて」を行った。いずれの研究も思想の文脈を踏まえて日本哲学を新しい視点から論じるものであるが、それに留まることなく現代日本においてそれぞれの思想を読み直すことで開かれる可能性の探求に重きを置いた。いずれの研究発表も日本哲学研究を通じた現代日本哲学の更新を目指すものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
九鬼周造と中井正一の比較論文を執筆したほか、他の日本の哲学者との比較検討を通じて発見した論点を踏まえた田辺元論の執筆、九鬼周造の哲学におけるカトリックの文脈を検討する九鬼周造と岩下壮一の比較研究や、昭和前期の日本哲学の観点から現代日本の哲学者である檜垣立哉の哲学を論じる研究発表など、様々な都合から当初の予定とは少し異なっているが、日本哲学の文脈を解明しながら戦後日本社会の様々な実践を論じる研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き西田幾多郎、田辺元、九鬼周造、中井正一の4人に注目し、戦前の日本思想の頂点にして戦後の実践の起点となる1935年前後の日本哲学の思想の文脈を明らかにすることを目標に研究を続ける。中井正一の機会美についての議論をそれに大きく影響を与えた板垣鷹穂の研究を踏まえてモダニズムの観点から論じる研究発表を国際学会で発表することが決定している。また「平行線と脱走:九鬼周造と中井正一の隔たりについての思想」の続編として九鬼周造と中井正一の偶然と必然の観点に着目した比較研究を計画している。また昨年度から続けている西田幾多郎研究を継続し、西田と田辺、九鬼の比較研究を行う。田辺と中井、そして三木清の思想を検討し、媒介を重視した哲学者間の共通点と違いを探っていく。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた国際学会が今年度開催されず、2023年度開催となったため旅費の使用が予定よりも小さくなった。今年度は昨年度開催されなかったヨーロッパで開催される国際学会に参加し、研究発表を行う。
|