2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Study Toward a Systematic Classification of Kant's Theory of Modality
Project/Area Number |
22K19973
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
繁田 歩 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (80961622)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | イマヌエル・カント / 様相 / 現代認識論 / 批判哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では18世紀ドイツの思想家イマヌエル・カントの理論哲学における、「様相」概念(可能性、現実性、必然性)の本性にまつわる、曖昧性の問題に接近することを目標としていた。具体的に言えば、カントの論じている様相という概念は、論理的、認識、形而上学のどの観点にも関連してしまっており、そこには混同の可能性があったのである。2023年度の成果として二点に言及したい。第一に、本研究課題について議論を深めるために欧州を中心に活躍する研究者らと意見交換のための研究会を開催した。この成果として、様相の認識論的な諸相である「真とみなすこと」概念について理解を深めることができた。具体的には、カントは経験的な認識に関するかぎり信念が知識に変化することを認めるが、これは現実性が必然性へと変化することを示唆する点で問題含みなのであった。一つの可能性として本研究では経験的な必然性概念を蓋然性という弱い意味で理解することを提唱していたが、ミラノ大学での研究交流の成果として、カントが歴史的信念とよぶものは本来知識であるという逆の読解の可能性を文献学的な裏付けとともに知ることができた。このような海外渡航の実施ができたことが本園の成果の一つである。第二に、2023年度中には、『純粋理性批判』において、カントは様相概念に限らず論理、認識、そして形而上学の枠組みをまたぐような主張をすることを指摘したうえで、そのような特殊な態度がなぜ可能であるかを批判哲学というカントの取り組みの本性にさかのぼって再検討した。この議論は学術雑誌『フィロソフィア』に論文として掲載された。
|