• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Research-status Report

イスパニア技術哲学の系譜

Research Project

Project/Area Number 22K19975
Research InstitutionRitsumeikan University

Principal Investigator

豊平 太郎  立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (20960975)

Project Period (FY) 2022-08-31 – 2024-03-31
Keywords技術哲学 / スペイン語圏思想 / オルテガ・イ・ガセット / 歴史主義 / 文化相対主義 / 芸術
Outline of Annual Research Achievements

本研究はスペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセットから始まる現代スペイン語圏における技術哲学の系譜を検討するものである。2022年度においては現代スペイン語圏哲学全体の基礎を築いたオルテガの技術哲学の本質的な特徴について研究を進め、「イスパニヤ学会 第68回大会」において研究発表を行った。
オルテガの技術哲学の最大の特徴は技術を有用性と結びつける従来の議論とは反対に、人間の生物学的な生存には無用な「どうでもいい欲求」から生み出される「役に立たない技術」を強調した点にある。「どうでもいい欲求」はそれぞれの文化や時代によって異なるため、技術がそれぞれの時代と文化において持つ意味は全く異なるという文化相対主義的技術哲学にたどり着く。
ディエス・デル・コラールやマイス・バジェニージャ、ホセ・ガオスやレオポルド・セア、エドムンド・オゴルマンといったスペイン語圏の哲学者の技術論に共通してみられる歴史主義的態度や文化相対主義的な傾向が、イスパニア技術哲学の起点に位置するオルテガの技術哲学に由来するものであることがこの研究により確認できた。
またオルテガにおける「テクネ―(技術・芸術)」のもう一つの様相としての「生のための芸術」概念を鶴見俊輔の「限界芸術」概念から比較検討した研究を「第23回京都セルバンテス懇話会全国・奈良大会」において発表した。鶴見は「限界芸術論再説」のなかで「限界芸術」を明確に「大衆の反逆」の文脈に位置付けたが、そこから両者がともに「大衆芸術」と「専門家のための芸術」としての「純粋芸術」の二項対立に解消できない生の領域に大衆社会における芸術の新しい役割を見出したことを論じた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

スペイン語圏の技術哲学についての文献の収集と分析をする中で、当初想定していたディエス・デル・コラール、ガルシア・バッカ、マイス・バジェニージャ等に加えて、オルテガの影響から出発する「メキシコ歴史主義学派」のホセ・ガオス、レオポルド・セア、エドムンド・オゴルマンや、「近代性/植民地性グループ」のエンリケ・ドゥッセル、アニバル・キハーノ、ワルテル・ミニョーロらも興味深い技術論を展開していることが分かった。検討するべき範囲が当初の想定よりも拡大したため、今年度は全体的に進捗が遅れ気味となった。

Strategy for Future Research Activity

当初想定していた哲学者に加えて、「メキシコ歴史主義学派 historicismo mexicano」と「近代性/植民地性グループ grupo Modernidad/Colonialidad」もイスパニア技術哲学の枠内で検討する必要が出てきたため、これらの思想潮流についても文献の収集と分析を進める。これらのグループにおいてはこれまで計画していた「近代性」と「技術」の関係に加えて、「新大陸の発見」や「植民地性」との関連でも近代技術をとらえなおす必要がある。従って、それぞれの哲学者と思想運動の基本的な流れの中に技術哲学がどのように位置づけられるかを思想史的に検討する予定である。直近の計画としては、ベネズエラの哲学者でシモン・ボリバル大学の初代学長としても多大な功績を残したマイス・バジェニージャにおける「大学」と「技術的理性」の関係についての研究を準備している。

Causes of Carryover

世界的なコロナ禍の余波や燃料費の高騰、円安などによる旅行費用の増大、および研究の範囲が想定よりも広くなったため調査旅行の計画を修正した。また国内外研究者とのミーティングがオンラインに切り替わったため、その分の支出を要しなかった。加えて研究対象の文献を取り寄せる予定だったベネズエラの政情不安により、必要な資料が年度内に入手困難になった。
23年度は修正した調査旅行を追加したうえで、滞っていた資料の入手が進むため、今年度に計上している分と合わせて計画通り執行する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2022

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] 大衆の反逆と限界芸術――大衆社会における美と芸術を巡るオルテガと鶴見俊輔2022

    • Author(s)
      豊平太郎
    • Organizer
      第22回京都セルバンテス懇話会全国・奈良大会
  • [Presentation] オルテガ・イ・ガセットにおける役に立たない技術とどうでもいい欲求2022

    • Author(s)
      豊平太郎
    • Organizer
      日本イスパニヤ学会 第68回大会

URL: 

Published: 2023-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi