2023 Fiscal Year Annual Research Report
日本語における付帯状況節の構造変化に関する通時的研究
Project/Area Number |
22K19986
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菊池 そのみ 筑波大学, 人文社会系, 助教 (70964807)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 日本語史 / 従属節 / 付帯状況節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語の「~て」、「~つつ」、「~ながら」のような動作が行われる際の主体や対象の付帯的な様子を表す節(=付帯状況節)の構造変化を通時的な調査に基づいて実証的に解明するものである。 最終年度は次の4点に取り組んだ。まず、「~て」、「~つつ」、「~ず」を対象として、付帯状況を表す非対格自動詞節のうち節内に対象主語を含む用例の量的・質的な変遷を明らかにした上で、当該の現象と言語類型の変化との関わりについて検討した(雑誌論文:『日本語の研究』19(2))。次に格付与の観点を取り入れ、中古語の従属節分類を新たに提案することを試みた(学会発表:大東文化大学語学教育研究所 2023 年度講演会)。更に付帯状況を表す用例を含む「~と」について学習用古語辞典における記述を整理することを通して、当該の節に関する研究と教育との接続に関する課題を具体的に提示した(学会発表:第五回北京師範大学・筑波大学学術交流会 十周年記念シンポジウム)。これらに加えて中古和文資料『夜の寝覚』を対象に品詞や活用形を指定した検索が可能となるコーパスの構築を進めた(学会発表:言語資源ワークショップ2023)。 研究期間全体を通して、付帯状況節の構造変化に着目し、そのプロセスを明らかにすると共に、中古語の従属節分類について新たな観点から検討を加えたことが本研究の中心的な成果である。更にこのような調査に資するコーパスを独自に構築しつつ、その方法・進捗状況・課題を公表することも達成した。また、日本語学において「付帯状況」という術語がどのように用いられてきたかという点や古文教育における付帯状況節に関する課題についても検討したことによって、当該分野の更なる課題を明確にしたと言える。
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