2023 Fiscal Year Annual Research Report
周縁の詩的言語と象徴主義:イスパノアメリカ・モデルニスモの比較文学的研究
Project/Area Number |
22K19987
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
棚瀬 あずさ 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70963627)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ラテンアメリカ文学 / 近代詩 / 世界文学 / 象徴主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀末から20世紀初頭までイスパノアメリカを中心に展開された文学運動「モデルニスモ」は、スペイン語文学、中でも特に詩の主題や語法を、西欧芸術をモ デルに拡大することを目指す運動であり、同時期に世界規模でインパクトを持ったフランス象徴主義の影響を強く受けながら展開された。 詩人ルベン・ダリーオ(ニカラグア出身、1867-1916)の主導で1890年代にイスパノアメリカで確立したのちにスペインに伝播し、1910年代までスペイン語圏全域を席捲する一大ムーブメントとなった。本研究は、一般に「非国家的な課題」(A. Balakian)を扱うと言われる象徴主義の詩的言語に、実は各地の文化的・社会的背景に由来する看取しづらい地域的特質が存在するのではないかという仮説のもと、モデルニスモの詩がフランス象徴詩との関わりにおいて持つ固有の性質を、両者の原典の比較分析から明らかにしようとするものである。原典を比較対照し、詩的言語の本質的な相違点を見出すとともに、その相違点が生じる要因を文化的・社会的背景から考察する。 2年度にわたる研究計画の2年目にあたる本年度は、メキシコシティのエル・コレヒオ・デ・メヒコ大学院大学、スペイン国際開発協力庁(AECID) 図書館を訪問し、イスパノアメリカ詩の作品論と当時の社会・文化に関わる資料を中心とする文献収集および現地研究者との意見交換を行なった。また、ノートルダム大学で開催された国際ルベン・ダリーオシンポジウムと東京スペイン語文学研究会において研究報告を行なった。 研究期間全体を通じて、各地の文化・社会を背景にした宗教・言語・哲学に関わる認識のあり方と詩的言語の関連について研究を進めることができた。
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